基本要素について

職務経歴書の書式には「編年体式」と「キャリア式」の2つがあります。キャリアに応じて書きやすい書式を選択しましょう。

編年体式

最も一般的な書式です。入社から配属、異動、昇進などの経歴を年代順に並べ、職務内容を簡潔に説明します。実績や成果は職務内容に続けて記述します。この書式は業務のプロセスを時系列に追いやすい反面、実務経験が経歴の中に埋没しやすく、アピールポイントを強調しづらいデメリットがあります。キャリアの浅い人向きですが、キャリアの豊富な人には「キャリア式」をお勧めします。

キャリア式

担当業務が多岐にわたる場合や異業種間の転職をしている場合に適しています。「編年体式」ではメリハリがつかない場合に有効です。勤務先や年代に関係なく、担当した業務内容ごとに職歴をまとめるのが「キャリア式」です。強調したい職務内容は詳しく、そうでない内容は簡潔に記述します。この書式は緩急をつけてアピールできる点が魅力ですが、プロセスがわかりづらい欠点があります。職務経歴を冒頭に独立させてわかりやすく説明すると良いでしょう。

見やすく読みやすく

基本はA4サイズを使用します。履歴書とは異なり、職歴によって内容が多岐にわたる場合が多いため、手書きよりもパソコンで作成し、見やすく読みやすいものにすることが大切です。内容を盛り込みすぎて3枚以上になることがありますが、相手(人事担当者)の立場を考え、できれば簡潔に1枚でまとめるのが理想です。多くても2枚までにしましょう。

冒頭に「職務経歴書」と表題を入れ、作成日と応募者名を記入します。

表題に続き、次の要素を含めます

希望職種

複数の職種を募集している場合はもちろん、職務経歴を記述する前に簡単な志望理由を添えて明示しましょう。

職務経歴

同一職務しか経験がない場合は、職務内容と合体(編年体式)させても良いですが、複数の職場を経験した場合は職務経歴だけを見やすく列記してメリハリをつけましょう。

職務内容

職務経歴書の中で最も重要なポイントです。単に携わった業務内容を説明するだけでは、応募者のスキルや取り組み方が伝わりません。業務にどう関わったか、業務を通してどのようなスキルを身につけたかをしっかりアピールしましょう。また、読みやすくするために小見出しをつけるのも効果的です。

取得資格

希望職種と直接関係ない資格でも、どこで活かせるかわかりません。取得した資格は明示しておきましょう。

自己PR

ここでは人間性を開示するよりも、希望職種と接点のあるスキルや取り組み意欲をしっかりアピールしましょう。

職務経歴書の役割

認識しておきたい記述のポイント

職務経歴書とは、これまでどのような仕事に従事してきたかの履歴を示すものです。しかし、単に経歴を時系列に並べるだけでは、読み手には応募者の仕事に対する取り組み方や考え方は伝わりません。

多くの応募書類の中から自社に合いそうな人材を見つけるために、人事担当者はじっくり検討する余裕がないことがほとんどです。ざっと目を通して判断するため(ものの数十秒)、手にした瞬間にイメージがつかめる職務経歴書でなければ、面談への道は開かれません。

瞬時にイメージできる職務経歴書は、言葉が浮き上がり、熱い気持ちや意欲が伝わるものです。

単に「これまで何をしてきたか」だけでなく、「どう取り組んできたか」「その取り組みからどのようなスキルを習得したか」「そのスキルを活用してこれからどういう取り組みを目指しているか」までを、自分の言葉でしっかりアピールすることが大切です。

職務経歴書は、自分を売り込むためのプレゼンツールと考えると良いでしょう。

キャリアと能力を効果的に伝える

履歴書の書き方でも触れましたが、中途採用の目的は新規事業の立ち上げか戦力増強です。企業は応募者を教育しようとは考えておらず、即戦力として働いてもらうことを期待しています。

露骨な表現をすると、応募者を採用してしっかり元が取れるか、売り上げがアップするかを考えながら面接しています。つまり、キャリアや能力を効果的にアピールして「元が取れそうだ」と感じさせることが重要です。

同業他社への転職
現職(前職)で自分が手がけてきたことを、成果を中心に意欲的にアピールして、業界の知識や経験の豊富さを感じさせることが大切です。直接キャリアとは関係ありませんが、同じ業界で働いていると、お互いの機密事項などが発生するため、細心の注意が必要です。

異業種への転職
業界を問わず、ビジネススキルは仕事の根幹をなすものです。これまでに培ってきたスキルを応募先でどう活かせるか、対人折衝能力や手際の良い段取りなどを上手にアピールしましょう。

キャリアが浅い場合
短い期間であっても、仕事にどう取り組んできたか、評価を受けたことなどをエピソードを交えて説明しましょう。また、社会人としてビジネスマナーを徹底的に仕込まれた事例も大いにアピール材料になります。

転職回数が多い場合
仕事に飽きっぽい、人間関係のトラブルメーカーといったマイナス印象を与えないことが最も重要です。職歴と自分自身のキャリアプランを上手くマッチさせ、前向きな転職であることを印象づけることが大切です。

職務経歴書の書き方のポイント

職務経歴書には演出も求められます

人を採用してイメージが合わなかったからといって、簡単に解雇することはできません。人の採用は非常に高価な取引であり、慎重に見極めた上で採用を決定する必要があります。

人事担当者にとって、職務経歴書は面接前に応募者が自社に合うかどうかを見極めるための重要で貴重な資料(カタログ)です。

例えば、目の前に車のカタログがあると仮定しましょう。高品質な紙に格調高く説明されていても、単なるデータの羅列だけでは試乗してみたいという気持ちは湧いてきません。しかし、写真を添え、居住性や操縦性について感性に訴える記述があると、実物に触れてみたいと感じるものです。

このように、心をくすぐる表現こそが職務経歴書に求められています。「○○の業務について××を培った」だけでは心が動きません。「どのように取り組んだのか」「培った××をどう発展させようと思っているのか」など、業務を通じての気持ちの動きを補足説明することが大切です。これにより、記述者の物事に対する取り組み方や人間性が浮き彫りになり、ぜひ会ってみたいという気持ちが生まれます。

事実に反する記述は避けるべきですが、多少の誇張が加わっても、汗と涙の演出は許されるものです。熱い息吹を感じさせる職務経歴書は、人事担当者の心を捉えて離しません。