歴書、職務経歴書、添え状(カバーレター)は転職希望者のカタログです。

転職希望者の履歴書をチェックすることがありますが、本気で転職を考えているのかと疑いたくなることが多々あります。人事担当者は、面接しながら履歴書を見るわけではありません。事前に送られてきた履歴書を見て、自社に合うかどうかを判断しながら面接に呼ぶのです。

「独自の視点を持つことが重要です」スティーブ・ジョブズ

極端な言い方をすると、履歴書から転職希望者の人柄や能力を見極めるのです。ただ過去の行動記録を羅列するだけでは、心には響きません。一言でもいいので、気持ちを込めた言葉が欲しいのです。

履歴書や職務経歴書、添え状には、自分の視点や感性が盛り込まれていれば、「会って話を聞いてみたい」という気持ちに結びつくのです。履歴書や職務経歴書、添え状は転職希望者のカタログなのです。そのことをしっかり認識して記述することが、面接への近道です。

「言葉は魂の反映である」ウィリアム・シェイクスピア

明快な転職の理由

失敗の反省だって立派な理由になります

「リストラにあった」「勤務していた会社が倒産した」などやむを得ない理由を除いて、転職の理由を明確に答えられる人は少ないでしょう。多くの人が転職の必然性を考えすぎてしまうのです。

仕事が合わなかったり、人間関係のトラブルに巻き込まれて疲れ果てたことが転職のきっかけになることが多いです。それを素直に述べれば良いのです。ただし、「入社してみたら自分の描いていた仕事とあまりにも違っていました」では不十分です。「イメージと実態のギャップに戸惑い、学生時代の状況判断の甘さを反省しています」といった内容を盛り込むべきです。

人間関係のトラブルが原因の場合も、正直に「人と上手くやっていくのが苦手で…」と言ってしまうと、即刻お引き取りくださいと言われかねません。「ついつい仕事に夢中になり、気配りに欠けていたため、修復に努力しましたが溝は埋まりませんでした。仕事は一人で頑張っても限界があります。人との関わりの中で進むものだと痛感しました。心機一転やり直しです」と語れば、失敗の反省が活かされると好意的に受け止めてもらえるでしょう。

失業中か勤務しながらの転職か

やむを得ない理由で失業し、再就職を目指して活動している場合は、職を失った理由をはっきりと明示することが重要です。人事担当者は、職歴に空白がある転職希望者(失業中)には警戒心を抱きます。的確な状況判断ができる人物であれば、転職を考えたとき、勤務しながら転職活動をするでしょう。次の仕事が決まらないまま辞めてしまい、慌てて職探しをするのは状況判断が甘いと思われがちです。

たとえ好人物であっても、状況判断が甘い人物は仕事に穴を開けないとは限りません。不安が付きまとい、採用にはなかなか踏み切れないものです。不幸にして我慢しきれずに辞めてしまった場合でも、納得させる理由づけをしっかり考えてアピールすることが大切です。それを疎かにすると、いつまでたっても面接につながりません。

誤解されている即戦力

「即戦力とは?」と質問すると、多くの人が「業務で培ってきたスキル」や「コンピュータスキル」「語学力」と答えます。新聞記事でも同様の捉え方が見られますが、これらは的外れではないものの、何となくピンとこないこともあります。

業務で培ったスキルも、同じような業務に就けば問題なく機能するかもしれませんが、スキルをどう活かすかの発想がなければ限られた範囲での活用に終わってしまいます。即戦力が求められているからといって必死に語学力を身につけようとする姿を見ると悲しくなります。語学が達者だからといって何をしてくれるのでしょうか。語学力があればビジネスの範囲が広がる可能性はありますが、それだけのことです。

コンピュータスキルや語学力もツールにすぎません。自分を後押ししてくれるだけで、実際に発想し実行に移すのは自分自身です。これを自覚しなければ、せっかくのスキルも宝の持ち腐れに終わってしまいます。即戦力とは、顧客のニーズを自社のビジネスに置き換える能力です。顧客が何を考え何を求めているかを引き出し、それを商品開発やサービスにどう置き換えるかを的確に判断し、実行する力が真の即戦力です。

語学力・資格はツールでしかない

医師、弁護士、会計士などの資格が必要な職業がありますが、一般企業の採用において資格は必須条件ではありません。不動産関係では宅建、情報関連では基本情報技術者試験などが業務に直接結びつくことがあります。取得しておくと業務が円滑に進むことはありますが、資格があるからといって転職に有利になるわけではありません。資格や語学力は業務遂行を円滑に行うツールにすぎません。

企業は転職希望者にもっと異次元のものを求めています。欠員補充で中途採用するケースもありますが、企業は新しいビジネスを開花させる発想を求めています。これをしっかり認識しておかなければ、空回りしてしまうでしょう。

種々の資格を取得している人が次々とスムーズに転職したという話はよくありますが、資格があったから転職に結びついたのではありません。彼らの共通点は、資格をツールと捉え、決して武器と捉えていないことです。「ビジネスとは何か」という意識が備わっていて、それが評価されたと認識すべきです。

転職面接の留意点

スキルアップを狙った前向きな転職は意気込みがあり、表情にも気迫が感じられます。しかし、仕事が合わなかったり、人間関係のトラブルで転職を考えるときは、どうしても表情が冴えません。陰鬱な表情で面接に臨むと、印象が悪くなりがちです。どんなに良い資質を持っていても、悪い印象を与えてしまうと修復は難しいものです。頑張っても△止まりで、○をもらうことはできません。面接は非情なもので、生き残りゲームのようなものです。○をもらえないと次のステップに進むことはできません。

そこで、気持ちの切り替えが重要になります。例えば、ふと立ち寄った店で、店員のささやきに乗せられて予定外の商品を買ってしまった経験があるかと思います。これを逆手に

取るのです。面接に臨む際には、面接官をその気にさせて「一緒に働きましょう」と言わせることが目標です。

面接では、受験者の人間性で職場環境との適合性を、発想や視点で業務適性を判断しています。今まで携わった仕事を説明する際には、ただ何をやってきたかではなく、そのとき何を考え判断し、どう取り組んだかを話すことが大切です。失敗や苦労したこと、感動したことなど、多くの経験があるはずです。自分の取り組み方を説明しやすいエピソードを使い、「私はこのように取り組むことができます」と熱い気持ちを伝えることが重要です。熱い気持ちが相手の心を開き、その気にさせるのです。

気をつけたい語尾表現

無意識に口にした言葉で、面接官に鋭く突っ込まれてしまうことは多いです。どこにその道の専門家がいるかは分かりません。うっかり「○○を学びました」とか「○○を習得しました」などと過去形で話すと、「その程度でマスターしたって言うの?」と突っ込まれることがあります。「○○を学んでいます」と進行形で表現すると、少々突っ込まれてもやんわりとかわすことができます。

転職履歴書の書き方のポイント

人間性を浮き彫りにすることが最大のポイント

履歴書や職務経歴書をもとに書類選考を行い、面接に進む人を選んでいます。企業側は、職務経歴書で業務適性を確認し、履歴書で応募者の人間性を感じ取ろうとしています。

しかし、多くの履歴書は事実を羅列しているだけで、応募者の人間性や物事への取り組み方が伝わりません。

こういったタイプの方に限って、「相手の気持ちを思いやることができる」や「相手の立場を考えることができる」と自己PRすることがあります。しかし、どう表現すれば記述者の人物像が浮かび上がるかを考えれば、履歴書や職務経歴書を高額商品を購入する際のカタログと同じように考えると問題点に気づきやすいです。

ここでは、職務経歴書は別にして、履歴書について触れてみたいと思います。

一般的な履歴書用紙は、学歴や職歴の他に、特技・資格や趣味などの幅広い質問項目で記述者の人間性を浮き彫りにするように構成されています。

例えば、趣味の項目に「読書、音楽鑑賞」とだけ記載されていると、人事担当者は判断が難しくなります。しかし、「Aという歌手の○○を聴いて感動し、それ以来コンサートにも足を運んでいます」といった具体的な説明があると、読み手は記述者の気持ちを感じ取ることができます。これにより、ぜひ会ってみたいという気持ちにもつながるのです。

履歴書には限られたスペースしかありません。多趣味であっても、趣味の羅列を最小限に抑え、一言で趣味とどのように関わっているかを触れるだけで、生き生きとした履歴書に生まれ変わります。

「成功は準備ができた者に訪れる」トーマス・エジソン