コンピテンシーとは
コンピテンシーは、仕事で良い結果を生みやすい行動の特徴や考え方の傾向を指します。単なる知識や資格だけではなく、現場でどう動き、どう判断し、周りとどう協力して成果につなげるかに注目します。転職では、職務経歴書や面接でこの行動の再現性を示すことが大きな強みになります。
なぜ今、重視されるのか
仕事内容やツールが変わっても、成果につながる行動の型は共通点が多いからです。例えば課題を見つける、優先順位をつける、関係者と合意する、短いサイクルで検証する、振り返って改善する。この一連の動きができる人は、新しい職場でも立ち上がりが速いと考えられています。
近い言葉との違い
スキルとは
ある作業を行うための知識や手順のこと。例としてExcelの集計、図面作成、プログラミングなど。
資質とは
生まれ持った傾向や好みのこと。外向的、慎重、探求心が強いなど。
コンピテンシーは
スキルと資質を土台に、仕事の場面で実際に表に出る行動のパターンを指します。結果を出すための行動の組み合わせと言うと分かりやすいです。
よく使う関連用語をやさしく
構造化面接
あらかじめ決めた質問と評価基準で公平に行う面接。面接官の感覚だけに頼らず、同じ物差しで見ます。
行動面接
過去の具体的な行動を尋ねる面接。どの状況で、何を考え、何をして、どうなったかを詳しく聞きます。
STAR法
行動を整理して話す方法。状況(Situation)、役割や課題(Task)、行動(Action)、結果(Result)の順で語ります。
ジョブディスクリプション
職務記述書。担当業務、必要スキル、評価の基準をまとめた文書です。
KPI
重要指標。売上、継続率、対応時間など、成果を図る数字のこと。
アンコンシャスバイアス
無意識の思い込み。採用や評価の場で偏りが起きないよう、構造化面接などで対策します。
企業で使われるコンピテンシーの例
問題解決
課題の分解、原因の特定、打ち手の優先順位づけ、効果検証までを短い周期で回す。
コミュニケーション
目的と背景を簡潔に共有し、相手の前提を確かめながら合意形成を進める。
チームワーク
役割分担を明確にし、困りごとを早めに共有。相互レビューや振り返りを習慣化する。
顧客志向
顧客の状況や制約を理解し、価値の大きい順に提案を組み立てる。
自己学習と適応
変化した条件に合わせてやり方を見直し、新しいツールや知識を迅速に取り入れる。
職務経歴書での見せ方
冒頭の職務要約に、再現性のある行動を一文で置きます。実績欄は一つの事例を短くまとめ、以前の状態、あなたの役割、行動、結果、学びの順で書きます。数字は期間と対象を添えると伝わりやすくなります。
記述例
新規サポート体制の整備を担当。問い合わせ分類を見直し、回答テンプレートと担当ルートを設計。週次で応答時間を可視化し、改善を継続。3か月で平均対応時間を30%短縮。関係部署との定例で合意形成を強化した。
面接での伝え方
最初に結論を一言、その後にSTAR法で具体例を一つだけ話します。最後に入社後の活かし方を添えると、相手の仕事とのつながりが明確になります。
口頭の型
結論
私は課題を分けて短い周期で改善する進め方が得意です。
具体例
状況は問い合わせ増で遅延が発生。私の役割は窓口の改善。行動は分類とテンプレート整備、週次の確認。結果は平均対応時間を30%短縮。学びは可視化と合意の速度が鍵でした。
未来
同じ手順で御社のカスタマー対応の品質向上に貢献します。
自己診断チェックリスト
課題を大きいものから小さい作業に分けられているか
期限と優先順位を自分の言葉で言えるか
関係者を早めに巻き込めているか
数字で変化を確認しているか
振り返りと次の一手を習慣化しているか
一つでも弱い項目があれば、次の業務で一点集中して練習すると効果が見えます。
職種別の見え方のヒント
営業
リードの質向上、商談化率、受注率の改善。顧客ヒアリングと提案の検証サイクル。
マーケティング
集客から成約までの流れを分解し、仮説、施策、結果、学びを短期で回す。
エンジニア
要件整理、設計、実装、レビュー、デプロイ、運用の一連で、品質と速度の両立を意識。
デザイナー
課題の定義、ユーザー調査、プロトタイプ、ユーザーテスト、改善提案の継続。
バックオフィス
正確性、スピード、仕組み化。関係部署との合意形成とリスク管理。
コンピテンシーモデルの使い方
企業には共通項目の一覧をまとめたモデルがあることがあります。自分の行動と照らし合わせ、得意な項目は事例を整え、弱い項目は次の業務で意識して試します。評価シートやスキルマップがある場合は、到達レベルの定義を読み込み、行動を合わせ込みます。
よくある誤解と対策
性格診断と同じではない
性格そのものではなく、仕事上の行動の積み重ねが焦点です。事例で示すことを意識します。
一度身につけたら終わりではない
環境で求められる行動は変わります。定期的な振り返りと学習で更新していきます。
数字がないと示せない
数値化が難しい業務でも、時間の短縮、エラーの減少、関係者の合意形成など、変化を手がかりに言語化できます。
成長計画の立て方
目標を小さく区切り、週単位で試す
例として毎週一つの課題に対し、仮説、行動、結果、学びをメモに残します。
フィードバックの取り方
上司、同僚、関係部署から短いコメントをもらい、次の行動に反映します。可能なら360度評価の観点をまねて、複数の立場から意見を集めます。
学び直しの習慣
オンライン講座や書籍、社内勉強会で方法を増やし、実務で一つだけ試してみます。やりすぎず、一点に集中すると継続しやすいです。
応募先との会話で活かす
情報交換面談やカジュアル面談で、チームの目標と評価の基準を確認し、自分の事例の言い回しを合わせます。面接の逆質問では、最初の三か月で期待される役割や、成果を測る指標を尋ね、入社後の行動計画につなげます。
コンピテンシーは、成果につながる行動の型を言葉にしたものです。職務経歴書では事例を簡潔に、面接ではSTAR法で具体的に、入社後の活かし方までつなげて伝えると、説得力が高まります。行動は練習で身につきます。小さく試し、振り返り、次に活かす。この繰り返しが、あなたの強みを確かな力へ育てていきます。