KPI(主要な目標指標)とは

KPIは、目標に向けた進み具合を数字で確認するための指標です。毎日や毎週の仕事の様子を見える化し、どこを直せば結果が良くなるかを教えてくれます。転職活動でも企業の採用活動でも、今どの位置にいるかを冷静に把握するために使います。

KGI・OKRとのちがい

KGI(最終目標)
期末に到達したいゴールの数字。例:四半期売上、内定承諾数。
KPI(途中の目印)
KGIに近づくために日次・週次で追う数字。例:商談数、一次面接通過率。
OKR(目標管理の枠組み)
O=方向性を示す目標、KR=その達成を示す結果指標。KPIはOKRの達成を日々支えるメーターとして使います。

リーディング指標とラギング指標

リーディング指標(先行)
未来の結果を早めに知らせる数字。例:問い合わせの初回返信時間、資料ダウンロード数、応募完了率。
ラギング指標(遅行)
起きた結果そのものを示す数字。例:売上、内定承諾率、解約率。
両方を組み合わせると、手を打つタイミングを逃しにくくなります。

よく出る関連用語をやさしく

ノーススター指標(北極星)
その事業の価値を最も表す一本の指標。例:継続的に使ってくれるユーザー数。
ファネル
見込み客が成約に至るまでの段階の図。上から下へ人数が減っていく形で、どこで落ちているかを把握します。
ベースライン
今の実力値。これを起点に目標値を決めます。
ターゲット
達成したい値。期限とセットで決めます。
ガードレール指標
副作用を防ぐ見張り役の数字。例:顧客満足(NPS)、返金率、品質関連の指標。
虚栄の指標
見栄えは良いが意思決定に使いにくい数字。例:意味のない総PVだけの強調。

数式でわかる代表的なKPI

CVR(成約率)= 成約数 ÷ 訪問数
CTR(クリック率)= クリック数 ÷ 表示回数
CPA(獲得単価)= 広告費 ÷ 獲得数
解約率(チャーン)= 解約顧客 ÷ 期初顧客
MTTR(平均復旧時間)= 障害発生から復旧までの平均時間
ARPU(顧客あたり売上)= 売上 ÷ 顧客数
LTV(顧客生涯価値)= 平均月次粗利 × 平均継続月数
CAC(顧客獲得コスト)= 獲得費用 ÷ 新規顧客数

部門別のKPI例(定義つき)

営業
受注率=受注件数 ÷ 商談件数、商談化率=商談件数 ÷ リード数、平均受注単価=売上 ÷ 受注件数。
マーケティング
CVR、CTR、CPA、資料ダウンロード数、指名検索数。
カスタマーサクセス
オンボーディング完了率、解約率、初回応答時間、NPS(推奨度)。
開発・プロダクト
デプロイ頻度、リードタイム、MTTR、重大障害件数、バグ再発率。
バックオフィス
請求処理リードタイム、支払遅延率、在庫回転日数、採用のタイムトゥハイヤー。

求職者(転職活動)にとってのKPI

応募数だけでなく、質と流れを測ると改善が速くなります。
書類通過率= 書類通過社数 ÷ 応募社数
一次面接通過率= 一次通過社数 ÷ 一次面接社数
内定率= 内定社数 ÷ 応募社数
スカウト返信率= 返信数 ÷ 受信数
カジュアル面談化率= 面談実施数 ÷ 打診数
タイムトゥオファー= 応募から内定までの日数
見直し方の例:書類通過率が低ければ、職務要約の言い換えや実績の数字化、求人票との用語合わせから着手します。

KPI設計の手順(かんたん3ステップ)

課題を一文にする
例:一次面接までの離脱が多い。
行動に分解する
例:応募から初回連絡までの時間、面接のアジェンダ共有、質問への事前回答。
定義を文章にする
分子と分母、対象期間、除外条件、更新頻度、責任者を明記します。

SMARTで目標値を決める

具体的(Specific)
測定可能(Measurable)
達成可能(Achievable)
業務に関連(Relevant)
期限あり(Time-bound)
この五つを満たすと、現場で動かしやすくなります。

ダッシュボード運用のコツ

一画面一目的
判断に必要な数だけ並べます。
更新頻度を決める
日次、週次、月次のどれかに固定。
責任者とアラート
閾値を下回ったら通知、誰が対策するかをセット。
メモ欄
大きく動いた理由を一行メモ。学びが貯まります。

A/BテストとKPI

A/Bテストは施策の効果を比べる方法です。開始前に観測する指標を一つに絞り、期間と母数の目安を決めます。途中で指標を変えないことが信頼できる結論への近道です。

つまずきやすい点と回避策

指標が多すぎる
本当に意思決定に使う三つに絞る。
定義が曖昧
分子・分母・期間・除外を短文で記述。
数字はあるが行動に結びつかない
リーディング指標を一つ追加し、具体的な次の一手に変換。
副作用が出る
ガードレール指標を併置してバランスを取る。

採用・転職文脈のミニ辞典

タイムトゥハイヤー
募集開始から入社決定までの期間。採用スピードの目安。
承諾率
内定承諾 ÷ 内定提示。期待値の合意や条件提示の質が影響します。
オンボーディング
入社から早期に戦力化する立ち上がり期間。完了率をKPIとして持つと定着に効きます。
応募者管理システム(ATS)
候補者情報や面談日程を一元管理するツール。KPIの集計が楽になります。

すぐ使えるテンプレート

KPI名:週次コンバージョン率
定義:成約数 ÷ 訪問数(新規訪問のみ対象)。
期間・頻度:週次。月曜に前週分を更新。
目標値:3.0%
責任者:マーケティングリード
関連する先行行動:重要ページの改善数、A/Bテスト本数
ガードレール:顧客満足、返金率

チェックリスト

分母・分子・期間・対象・除外が文章で定義されているか
更新頻度と責任者が決まっているか
ベースラインと目標値が並んでいるか
先行行動とガードレールが用意されているか
ダッシュボードが一画面で読みやすいか

KPIは、最終ゴールに向かう毎日の進み具合を知らせてくれる実用的な数字です。

KGIやOKRと結びつけ、定義を明確にし、少数精鋭で運用する。小さな学びを積み重ねれば、事業も転職活動も安定して前へ進めます。