志望動機とは
志望動機は、「なぜその会社・その仕事を選ぶのか」を伝える短いストーリーです。あなたの経験や強みを、相手の事業・サービス・仕事の目的と結びつけ、入社後にどう役立てるかを具体的に示します。履歴書・エントリーシート・職務経歴書・面接のどこでも使われる核心のメッセージです。
企業が見ているポイント
採用側は「この人は何を大切にしていて、どんな価値を出せるか」を知りたいと思っています。事業内容やミッション(大切にしている目的)、バリュー(行動の基準)、仕事内容と、あなたの経験がどこでつながるかを見ています。カルチャーフィット(チームに合うか)や、スキルセット(できること)と学び直しの姿勢も評価対象です。
基本の型(結論→理由→具体例→未来)
志望動機は、結論→理由→具体例→未来の貢献の順に並べると伝わりやすくなります。
結論で「なぜこの会社・職種か」を一言。理由で「自分の価値観や興味」。具体例で「経験や成果」。未来で「入社後にどう活かすか」を示します。面接では60〜90秒、書類では200〜300文字を目安に、シンプルにまとめましょう。
下準備(企業研究と自己理解)
まず、企業研究で事業、プロダクト(製品・サービス)、顧客・ユーザー、強み、競合、ミッション・ビジョン・バリューを確認します。求人票の必須条件・歓迎条件、仕事内容(ユースケース、担当範囲)、チーム体制も読み込みます。次に、あなたの経験を振り返り、得意な進め方(問題解決、コミュニケーション、チームワーク、リーダーシップ、データ分析など)をメモ化しておきます。
素材の集め方(職務経歴書・自己PRと連動)
職務経歴書や自己PRから「相手の仕事に近い実績」を選びます。たとえば営業なら新規・既存の成果、マーケなら集客やコンバージョンの改善、エンジニアなら開発や改善の事例、デザイナーならUI/UXの改善やユーザーの反応など。相手の言葉に言い換えるのがコツです。
数字の入れ方(指標を相手の物差しへ)
同じ成果でも、会社ごとに大切にしている指標は違います。
売上・成約率・継続率・顧客満足(NPS)・問い合わせ対応時間・不具合件数・サイトの成約率(CVR)・アクティブユーザーなど、相手のKPIに合わせて言い換えます。数字は「以前→今」「期間」「対象」をそろえると、読み手が変化をすぐに理解できます。
例文テンプレ(目的別)
〈中途・経験者〉
「結論として、御社の◯◯事業で、顧客の課題を素早く解決する提案力を活かせます。理由は、前職で業務の分解と短い周期の検証を続け、対応時間を3か月で30%短縮した経験があるからです。この進め方を、御社の◯◯チームで仕組み化し、顧客満足の向上に貢献します。」
〈未経験へのキャリアチェンジ〉
「結論として、◯◯職に挑戦したいです。理由は、数値をもとに改善を続ける働き方が自分に合っていると、現職の業務改善で実感したためです。店舗の待ち時間を分析し、導線を見直して混雑を減らしました。入社後は、基礎から学び直しつつ、同じ手順で小さな改善を積み上げ、半年で一人前になります。」
〈新卒・第二新卒〉
「結論として、御社のプロダクトを“長く使われる体験”に育てたいです。理由は、ゼミと長期インターンで、ユーザーの声を集めてUIを直す活動にやりがいを感じたからです。実際に、操作の迷いを減らして離脱率を改善できました。入社後は学びを続け、先輩に教わりながら、改善提案を形にしていきます。」
職種別のヒント(言い換えの例)
営業:新規獲得、商談化率、受注率、継続率、LTV(顧客の生涯価値)。数字や顧客事例で語ると明快。
マーケティング:集客、クリック、コンバージョン(CVR)、リードの質。施策の仮説→検証→学びの流れを示す。
カスタマーサクセス:オンボーディング完了率、解約率、問い合わせの応答時間。関係部門との連携を書き添える。
エンジニア:開発範囲、品質、パフォーマンス、リリース頻度、MTTR(復旧時間)。チーム開発の役割を明確に。
デザイナー:課題の発見、プロトタイプ、ユーザーテスト、UI改善、定量・定性の反応。言葉は平易に。
バックオフィス:正確性、スピード、仕組み化、関係部署との調整。数や件数で効果を見える化。
面接での話し方(60〜90秒の口頭版)
冒頭に結論、次に理由、具体例は一つに絞り、最後を未来の貢献で締めます。大切なのは、相手の仕事と自分の経験がどうつながるかをはっきり言うこと。オンライン面接では短い文とゆっくりめの発声、要所の一拍で、聞きやすさが上がります。
書類での書き方
最初の一文で結論。次の二〜三文で理由と具体例。最後の一文で入社後の活かし方。会社名やサービス名、顧客像などの固有名詞を入れると、読み手の想像が具体になります。自己PRや職務要約と内容をそろえると、説得力が増します。
逆質問との連携
面接の最後に、「最初の90日で期待される役割」「評価の基準」「チームの連携のしかた」を質問し、答えに合わせて一言で志望動機を補足します。学びたいテーマや、すぐに貢献できる領域を添えると、前向きな姿勢が伝わります。
よくあるつまずきと直し方
抽象的で長い、他社でも通じる一般論、自己PRだけで終わる。この三つが代表的です。直すには、結論を最初に置き、会社の事業や顧客の話を一文入れ、具体例は一つに絞り、最後を入社後の行動で締めます。数字と具体例が一つあるだけで、印象は大きく変わります。
提出前チェックリスト
会社名・事業・職種を正確に書いているか
結論→理由→具体例→未来の順番になっているか
数字や固有名詞は間違いがないか
求人票の必須条件・歓迎条件に触れられているか
自己PR・職務要約・面接の話と芯が同じか
音読して60〜90秒、200〜300文字に収まっているか
入社後の貢献で前向きに
志望動機は、あなたの経験を相手の仕事に結びつけて語る短いストーリーです。結論を先に、理由と具体例で支え、入社後の貢献で前向きに締める。この流れができれば、書類でも面接でも一貫したメッセージになります。準備を重ねるほど、言葉はやさしく強くなります。あなたの歩みは、次の職場で必ず力になります。