離職率とは
離職率は、ある期間にどれだけの人が会社を辞めたかを割合で示す指標です。組織の健康状態や定着のしやすさを見るために使われ、採用や教育、働き方の改善点を見つける手がかりになります。求職者にとっても、企業研究でチェックしたい重要ワードです。
基本の計算式と用語
離職率= 期間内の離職人数 ÷ 平均在籍人数 × 100%
平均在籍人数=(期首在籍人数+期末在籍人数)÷2
別の算出方法
離職率(期間)= 期間内の離職人数 ÷ 期首在籍人数 × 100%
どの式を使っているかで数字が変わるため、比較するときは母数の定義をそろえます。
関連する用語
定着率:在籍し続けた割合。単純化すると 100% から離職率を引いた値に近いですが、計算方法の違いに注意。
退職率:離職率と同じ意味で使われることが多い呼び方。
早期離職率:入社後の短期間で辞めた割合。例として3か月以内、半年以内、1年以内など期間を決めて測ります。
新卒三年離職率:新卒入社から3年以内に辞めた割合。年次ごとにコホートで追います。
自発的離職と会社都合離職:本人の意思か、配置転換や事業再編など会社側の理由かで区別します。
具体例でイメージ
期首200人、期末220人の会社で、年内に30人が退職した場合
平均在籍人数=(200+220)÷2=210人
離職率= 30 ÷ 210 × 100% ≒ 14.3%
何が分かるのか
人材の入れ替わりの速さ
離職率が高いと、採用と教育に常にリソースが取られます。
ミスマッチの兆し
早期離職率の上昇は、採用要件やオンボーディングに改善余地があるサインです。
マネジメントや制度の課題
評価の納得感、成長機会、働き方、報酬バランスなどが影響しやすい領域です。
採用と人事の関連用語をやさしく
オンボーディング
入社直後の立ち上がり支援。最初の90日で役割と学習計画を整えることで早期離職を抑えやすくなります。
エンゲージメント
仕事や組織への前向きな気持ちの強さ。パルスサーベイ(短い定期アンケート)で測り、改善につなげます。
eNPS
従業員版の推奨度指標。職場を勧めたいかを数値化し、定着との相関を見ます。
ピープルアナリティクス
人事データの分析。部署、職種、年次、勤務地、雇用形態でコホート分析すると原因特定が進みます。
タレントプール
将来の採用候補リスト。補充採用だけでなく、配置や育成の計画に役立ちます。
求職者の視点での見方
数字だけで判断しない
業界特性、事業フェーズ(急成長や再編期間)は離職率に影響します。
定義を確認する
正社員のみか、契約社員やアルバイトを含むか、計算期間はいつか。
合わせて聞くと良い質問
最初の90日で期待される役割と評価の基準
学習支援やキャリアパスの具体例
働き方の前提(フルリモート、ハイブリッド、フレックス、副業可否)
最近の改善施策と、その効果を示す指標
企業側が離職率を下げるための打ち手
採用前
ジョブディスクリプションを具体化し、面接で仕事の一日や評価の基準をすり合わせる。
入社直後
メンター、週次1on1、業務マニュアル、質問窓口の整備。オンボーディング完了率をKPIに。
評価と報酬
目標設定の透明性、フィードバック頻度、成果と報酬の連動。
働き方と環境
リモートや裁量労働の活用、在宅手当、設備・ツールの整備、健康支援。
コミュニケーション
パルスサーベイとアクション、部門横断の相談窓口、エグジットインタビュー(退職面談)で学びを蓄積。
指標設計のポイント
分子と分母を文章で定義
例:期間内に退職した正社員数を分子、平均正社員在籍数を分母とする。
期間と更新頻度
月次、四半期、年次のどれで見るかを固定。
切り口のそろえ方
部門、職種、勤務地、雇用形態、勤続年数別に可視化。早期離職率は別指標にして追う。
ガードレール指標
離職率だけでなく、品質や顧客満足、採用のタイムトゥハイヤー、教育コストも併置してバランスを見る。
指標いろいろ
在籍率
一定期間後に残っている割合。入社コホートで見ると育成の効き目が分かりやすい。
欠勤率・休職率
体調や環境の課題を早期に把握する補助指標。離職の予兆として役立ちます。
内部異動率
辞めるのではなく社内で場所を変える割合。定着のための選択肢が機能しているかを示します。
費用面の考え方(概算の目安づくり)
離職コストの概念
採用費、面接・教育の時間、引き継ぎの負荷、生産性の一時低下などを合計して見積もります。
かんたん式の例
離職コスト ≒ 採用単価+研修期間の人件費+現場サポートの稼働換算
正確さよりも、改善提案の優先度づけに使うのが目的です。
よくある誤解と注意点
数字が低ければ常に良いわけではない
挑戦の少なさや停滞を示す場合もあります。成果や学習の指標と合わせて読みます。
短期の上下に振り回されない
季節要因や一時的な再編の影響を受けます。トレンドと要因メモを残しましょう。
比較は定義をそろえて
母数と対象者の範囲、期間の一致が前提です。
ミニチェックリスト(求職者向け)
離職率の定義と期間は明示されているか
新入社員のオンボーディングの実例はあるか
評価と昇給のタイミング、基準は公開されているか
成長機会(研修、メンター、書籍・資格補助)は十分か
働き方や福利厚生は自分の希望と合うか
離職率は、組織の定着や働きやすさを映す大事な数字です。
計算式と定義を確かめ、早期離職率やエンゲージメントなど関連指標とセットで読むことで、表面の数字以上の意味が見えてきます。求職者は企業研究の材料として、企業は改善の羅針盤として活用することで、ミスマッチを減らし、安心して働ける環境に近づけます。