新しい職場への入職(転職)、誠におめでとうございます。 期待と同時に、「初日は何をすればいいのか」「必要な書類は揃っているか」「忘れ物はないか」といった不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

看護師の入職準備は、一般の職種とは異なり、法的な手続き(資格の確認)や専門的な物品の準備が必要となります。

この記事では、入職日当日に慌てないため、またスムーズなスタートを切るために必要な準備を、信頼できる情報に基づき「3つのカテゴリー」に分類した完璧なチェックリストを作成しました。ぜひ一つひとつ確認しながら準備を進めてください。


3つの準備カテゴリーとは?

入職準備をスムーズに進めるコツは、やるべきことを3つのカテゴリーに分けて整理することです。

  1. 【行政・書類】: 法的手続きや社会保険関係。忘れると入職手続きが滞る最重要項目です。
  2. 【業務・物品】: 看護業務に必要な専門アイテム。職場のルール確認も含まれます。
  3. 【知識・心構え】: 新しい環境に早期に適応するための準備です。

1.【最重要】入職手続きに必要な「行政・書類」チェックリスト

これらは入職日または事前に提出を求められる、法的に重要な書類群です。漏れがあると給与計算や社会保険の加入が遅れる可能性があるため、最優先で準備してください。

前職(または手元)から準備するもの

  • □ 雇用保険被保険者証 (前職を辞める際に受け取っているはずです。転職先に提出します)
  • □ 年金手帳(または基礎年金番号通知書) (厚生年金の手続きに必要です)
  • □ 源泉徴収票 (前職の職場で発行されます。年末調整に必要になるため、必ず受け取りましょう)
  • □ 看護師等免許証(原本) (これが最も重要です。コピーではなく**「原本」**の提出を求められることがほとんどです。看護師であることを法的に証明する唯一の書類です)

転職先(新しい職場)から受け取り、提出するもの

  • □ 雇用契約書(労働条件通知書) (受け取るだけでなく、給与、休日、勤務時間、残業などの記載内容を必ず確認しましょう)
  • □ 誓約書・入職承諾書 (守秘義務などに関する署名・捺印を求められます)
  • □ 身元保証書 (家族などに保証人になってもらう書類です。必要な職場と不要な職場があります)

自分で用意・確認するもの

  • □ 健康診断書 (入職前の健康診断(雇入時健康診断)の実施を求められる場合がほとんどです。指定の期日までに受診しましょう)
  • □ 給与振込先の口座情報 (銀行名、支店名、口座番号が正確にわかる通帳やカードのコピーなど)
  • □ マイナンバー(個人番号)カードまたは通知書 (税金や社会保険の手続きに必須です)
  • □ 印鑑(認印・シャチハタ) (手続き書類への捺印で多数使用します。シャチハタ不可の場合もあるため、朱肉を使う印鑑も用意しましょう)
  • □ 通勤経路の確認・申請書類 (交通費の申請のために、最も合理的で安価な通勤ルートを確認しておきます)

2.【看護師特有】業務で必要な「物品」チェックリスト

次に、看護業務で日常的に使用する専門的なアイテムです。これらは「病院から貸与されるもの」と「自分で用意するもの」に分かれるため、事前に確認が必要です。

必須アイテム(支給か自前か要確認)

  • □ 聴診器(ステートスコープ) (貸与される場合もありますが、多くの看護師は使い慣れた私物(自前のもの)を使用します)
  • □ ナースシューズ(サンダル) (安全規定(つま先が覆われているか等)や、色の指定(白のみ等)があるか必ず確認してください。初日は自前の清潔なものを持参し、後で支給される場合もあります)
  • □ 時計 (バイタルサイン測定のため、秒針付きは必須です。感染対策の観点から、腕時計ではなく、ポケットに留める「ナースウォッチ(フォブウォッチ)」が推奨されます)
  • □ ユニフォーム (ほとんどの場合、貸与されます。サイズ合わせのため、事前または初日に行います)

ポケットに入れる「七つ道具」

感染対策や効率化のため、ポケットの中身は最小限にするのが基本です。

  • □ 筆記用具(3色ボールペンなど) (「黒・赤・青」の3色(または4色)ボールペンが必須です。夜勤などでカチカチ音が出ない「ノック音が静かなタイプ」を選ぶとベテランに好まれます)
  • □ メモ帳(ポケットサイズ) (すぐに取り出せる小さなリングメモ帳など。防水カバー付きのものが人気です)
  • □ ハサミ(看護師用) (テープが切りやすく、患者さんの皮膚を傷つけないよう刃先がガードされている医療用のハサミが推奨されます)
  • □ ペンライト (瞳孔(対光反射)の確認や、夜間の巡視で使用します)
  • □ 印鑑(認印・またはシャチハタ) (日々の記録や確認印で使用します。電子カルテ化されていても、紙の伝票などで必要な場面が多いため、ポケットに入れておくと便利です)
  • □ 携帯用の手指消毒ジェル・クリーム (頻回の手洗いで手が荒れるため、保湿剤(ハンドクリーム)は必須です。ただし、匂いが強いものは避けましょう)

あると便利なサポートアイテム

  • □ 着圧ソックス(弾性ストッキング) (立ち仕事による足のむくみや疲労を軽減するために、多くの看護師が愛用しています)
  • □ バインダー(A4またはポケットサイズ) (受け持ち患者さんの情報などを挟んでおくために使います。個人情報の扱いは職場のルールを厳守してください)
  • □ 看護・医学略語集(ポケットサイズ) (職場特有のローカルな略語が多いため、最初のうちは手元にあると安心です)

3.【独自性】差がつく「知識・心構え」チェックリスト

物品や書類が揃っても、初日の不安は残るものです。最後に、新しい環境にスムーズに適応するための「心構え」をチェックしましょう。

□ 挨拶(自己紹介)を準備する

初日、あるいは朝礼で必ず自己紹介(挨拶)を求められます。「1分バージョン」と、忙しいナースステーション向けの「15秒バージョン(簡潔版)」の2パターンを準備しておきましょう。 (例:氏名、看護師経験(〇年目、〇〇科出身)、新しい職場への抱負、「ご指導よろしくお願いします」という謙虚な一言、など)

□ 職場の理念と専門分野を確認する

転職先が「なぜ地域で評価されているのか」を確認しておきます。例えば、リハビリに力を入れているのか、化学療法がメインなのか、在宅医療に特化しているのか。その領域の基本的な知識や、病院(施設)の理念に目を通しておくと、業務の理解が早まります。

□ ブランクがある場合:知識の「棚卸し」

数年間のブランクがある場合、基本的な解剖生理や、よく使う薬剤の知識、看護手順などを軽く復習しておくと、心の余裕が生まれます。(ただし、やりすぎは禁物です。職場のローカルルールのほうが優先されるため、まずは「忘れていることを思い出す」程度で十分です)

□「教えてもらう」謙虚な姿勢の準備

最も重要な準備です。あなたがどれほど経験豊富なベテラン看護師であっても、新しい職場では「新人」です。物品の場所、独自の記録ルール、医師の癖など、覚えることは山のようにあります。 「郷に入っては郷に従う」姿勢で、「お手数ですが、よろしくお願いします」という謙虚な態度が、周囲のスタッフとの関係を築く一番の近道です。


完璧な準備が初日の不安をなくします

入職準備とは、単に必要なモノを揃えることではありません。法的な手続きを確実にこなし、働くための環境を整え、「よろしくお願いします」という誠実な姿勢を準備することです。

このチェックリストを活用して万全の準備を整え、自信を持って看護師としての大切な初日を迎えてください。