看護師の転職活動において、採用担当者があなたの「本当の実力」を知るために最も重視する書類、それが「職務経歴書」です。

履歴書があなたの「プロフィール(事実)」を証明する公的な書類であるのに対し、職務経歴書は、あなたがこれまで「どのような環境で」「どのような看護を実践し」「何ができるのか」を具体的にアピールするための、唯一無二のプレゼンテーション資料となります。

この記事では、採用担当者の視点に基づき、看護師が転職で成功するために不可欠な、信頼性の高い「職務経歴書」の書き方を、構成要素からケース別のポイントまで詳しく解説します。


【最重要】「履歴書」と「職務経歴書」の根本的な違い

まず、この二つの書類の役割の違いを明確に理解することがスタートラインです。

履歴書:あなたという「事実」を証明する公的書類

履歴書は、氏名、生年月日、学歴、資格、そして「いつ、どこに所属していたか」という職歴の事実を、決められたフォーマットで記載する公的書類です。

職務経歴書:あなたの「経験とスキル」を売り込むプレゼン資料

職務経歴書は、履歴書では書ききれない「具体的な業務内容」や「発揮したスキル」「貢献」を、自由な形式(A4用紙1〜2枚程度)で詳細にアピールする書類です。採用担当者はこの書類を見て、あなたが「即戦力になるか」を判断します。


なぜ看護師に職務経歴書が必要なのか

「看護師の仕事はどの病院でも同じでは?」と思うかもしれませんが、採用側はそうは考えていません。

ルーティン業務を「強み」として可視化するため

あなたが「当たり前」と思って行っている日々の業務(例:採血、点滴管理、急変対応)も、働く環境が変われば「貴重なスキル」となります。例えば、クリニックは病院での高度な急変対応スキルを求めませんし、逆に大学病院はクリニックの接遇スキル以上に高度な医療機器の操作経験を求めます。

職務経歴書は、あなたの「当たり前」を、応募先が求める「強み」として翻訳し、可視化する役割を担います。

採用後のミスマッチを防ぐため

詳細な職務経歴書は、採用側が「この人はウチの病棟のレベル(例:重症度、忙しさ)に合っているか」を判断する材料となり、結果として「入職したけれど、こんなはずではなかった」という不幸なミスマッチを防ぐことにも繋がります。


看護師の職務経歴書:3つの基本構成要素

職務経歴書には決まった形式はありませんが、以下の3つの要素で構成するのが最も一般的で読みやすい形式です。

1. 職務要約(サマリー)

冒頭に、あなたの全キャリアの「概要」を数行で記載します。多忙な採用担当者が最初に読む部分であり、ここで興味を持たせることが重要です。

2. 職務経歴(詳細)

書類の核となる部分です。これまでの勤務先ごとに、どのような環境で何をしていたかを具体的に記載します。

3. 保有資格・自己PRなど

最後に、看護師免許以外の保有資格や、職務経歴の詳細では伝えきれなかった熱意や強みを「自己PR」としてまとめます。


【書き方1】職務経歴(詳細)で伝えるべき5つの情報

職務経歴(詳細)の部分には、ただ業務内容を書くだけでなく、以下の5つの情報を必ず盛り込むことで、信頼性が格段に向上します。

(1)勤務先の基本情報(病院概要)

あなたがどのような環境で働いていたかを伝える、重要な「背景情報」です。 (例:〇〇病院 / 2018年4月〜2024年3月 / 病床数:300床 / 診療科:〇科 / 看護体制:プライマリーナーシング、など)

(2)所属部署と担当業務

配属された診療科(病棟)と、そこで日常的に行っていた主な看護業務を記載します。 (例:外科・消化器外科病棟(40床)にて、周術期患者の看護、化学療法・緩和ケアの補助、入退院支援などを担当)

(3)専門的なスキル・経験

あなたが扱ってきた医療機器や、得意とする看護技術を具体的に書きます。これは即戦力アピールに直結します。 (例:人工呼吸器・PCPS・IABPの管理、化学療法ポートの取り扱い、内視鏡介助、救急カートの管理・対応)

(4) 役職・委員会活動など(役割)

もし役職や特別な役割(リーダー、プリセプターなど)を経験していれば、必ず記載します。指導力や協調性の証明となります。 (例:チームリーダー(2年間)、新人プリセプター(3名担当)、医療安全委員会のメンバーとして活動)

(5)実績・工夫した点(主体性)

ただ業務をこなすだけでなく、「主体的に何をしたか」を記載できると、評価が大きく上がります。 (例:〇〇業務のマニュアル改訂に参加、病棟のヒヤリハット事例の分析と対策を提案、業務効率化のために〇〇を導入)


【書き方2】職務要約(サマリー)の作成術

職務要約は、上記の「職務経歴(詳細)」を完成させてから、その内容を要約して作成します。

冒頭で「つかむ」ための要約

採用担当者は一日に何十通もの書類を見ます。冒頭の数行を読み、その先を読み進めるかを判断します。 (例:大学病院の急性期病棟で6年間、リーダー及び新人指導を経験。周術期看護と化学療法の知識を活かし、貴院の〇〇分野で即戦力として貢献したいと考えております。)


【書き方3】看護師ならではの「自己PR」欄

自己PR欄は、職務経歴(詳細)の「補足」です。単なる熱意(頑張ります)ではなく、経験に基づいた強みを書きます。

経験と応募先の「接点」を強調する

応募先の病院や施設が「何を求めているか」を分析し、自分の経験の中で、それに最も合致する強みをアピールします。 (例:急性期病院に応募するなら「急変対応力」、クリニックなら「患者さんへの丁寧な指導・接遇力」を強調するなど)

具体的なエピソードを添える

「コミュニケーション能力が高いです」と書くだけでなく、「(職歴の)〇〇業務において、多職種と連携し、カンファレンスを主導して退院支援計画を立案しました」といった具体的なエピソードを添えることで、言葉に信頼性が生まれます。


【ケース別】経験が浅い・ブランクがある場合は?

経験が浅い・第二新卒の場合

看護師経験が浅い(例:3年未満)場合、アピールできる実績は少なくて当然です。スキルを羅列するよりも、「何を学んだか」「どのような姿勢で業務に取り組んできたか」という学習意欲や素直さ、熱意を前面に出すことが効果的です。

ブランク(離職期間)がある場合

育児や介護などでブランクがある場合、その事実は隠さず正直に記載します。ブランク期間を「〇年〇ヶ月(育児のため)」と簡潔に記載し、その上で「復職に向けて〇〇の研修を受けた」など、復職への意欲と準備を自己PR欄で補足すると良いでしょう。


【書式】読みやすいフォーマットのルール

内容は中身が最も重要ですが、読みやすい形式(フォーマット)でなければ読んでもらえません。

枚数はA4用紙1〜2枚にまとめる

ダラダラと長く書くのは逆効果です。あなたのキャリアをA4用紙1枚、多くても2枚までに要約する能力が問われます。

箇条書き(ビュレット)を活用する

業務内容やスキルは、「~し、~を行い、~も担当しました。」といった文章(散文)で書かず、「・~を担当」「・~の管理」「・~の作成」のように、箇条書き(ビュレットポイント)を積極的に活用してください。格段に読みやすくなります。

専門用語・ローカル略語を使いすぎない

採用担当者(特に人事課の担当者)が、必ずしも看護師資格を持っているとは限りません。あなたがいた職場でしか通用しない「ローカルな略語」や、過度に専門的な医学用語を多用するのは避け、誰が読んでも理解できる言葉で記述してください。


まとめ:職務経歴書はあなたの「看護観」を伝える資料です

職務経歴書を作成するプロセスは、あなた自身のキャリアを振り返り、「自分はどのような看護を実践してきたのか」「次に何をしたいのか」という「看護観」を棚卸しする作業でもあります。

あなたの貴重な経験とスキルが正確に伝わるよう、事実に基づき、誠実かつ具体的に作成してください。