看護師が退職・転職を考える主な理由を「公的統計」と「制度情報」に基づいて整理し、次の職場選びに役立つ実践ポイントをわかりやすく解説します。日本看護協会の全国調査や厚生労働省資料を一次情報として確認し、年代・働き方の違いも踏まえて解説します。
最新データの要点
新卒看護師では、管理者が把握する退職理由の上位に「精神的な健康」「適性への不安」「実践能力への不安」「人間関係」が並びます。これは2024年実施の日本看護協会「病院看護実態調査」による報告です。数字で裏づけされた傾向として、早期定着にはメンタルヘルス支援と教育体制の充実が鍵といえます。
データでみる「新卒の退職理由」上位
同調査で看護管理者が選んだ主な理由(複数回答)では、健康上の理由(精神面)が最頻、次いで適性不安・実践力不安・人間関係・他施設への関心などが続きました。実数と割合を示すことで、現場での支援ポイント(プリセプター支援、段階目標、相談体制)が明確になります。
経験者・求職者の「退職理由」年代別の特徴(厚労省資料)
看護経験者(現在は未就業または他職種で求職)の年代別では、全体上位は「結婚」「子育て」「転居」「妊娠・出産」「自分の健康(身体)」で、20代は精神的健康、30〜40代はライフイベント(出産・育児・配偶者転勤)、50代は「親族の健康・介護」が目立ちます。年齢と生活環境が理由の色合いを大きく左右します。
ランキングの読み方(3つの視点で整理)
退職理由は大きく「ライフイベント(結婚・出産・育児・介護・転居)」「職場環境(人間関係・勤務時間・夜勤負担・残業)」「キャリアと健康(適性・実践力不安、学びの機会、身体・精神の健康)」に分けると、対策が立てやすくなります。一次データでも、この三類型に収れんする傾向が読み取れます。
よくある理由を“次の職場選び”に活かす方法
・精神的負担が大きかった → メンタルヘルス相談窓口や面談の頻度、夜勤明けの休息設計、勤務間インターバルの運用を確認
・育児と両立が難しかった → 夜勤回数の上限、時短・日勤常勤、院内保育・病児保育の有無を確認
・人間関係に悩んだ → ハラスメント防止の運用(窓口・初動対応・再発防止)を採用面接で質問
これらは厚労省の勤務環境改善・ハラスメント対策の枠組みにも沿う確認ポイントです。
面接・見学で確認したい具体質問(実践メモ)
- 教育体制:OJTの段階目標、評価面談の頻度、プリセプターの配置
- 夜勤・残業:夜勤回数の上限、仮眠環境、残業発生の主因と平均時間
- 働きやすさ:勤務間インターバルの運用、シフト希望の通りやすさ
- 相談体制:メンタルヘルス支援、ハラスメント相談窓口と対応の流れ
- ライフ支援:院内保育、育休復帰率、介護・看取りの支援体制
制度面の土台(勤務環境改善支援センターによる支援の対象領域)と合致しているかも併せて確認しましょう。
数字で確かめる:離職率と賃金の基礎知識
「離職率」は病院単位で差が出ます。新卒離職率は年によって変動しますが、日本看護協会の最新報告では一桁台に改善したとのまとめも出ています(年度・算出法の定義に注意)。また賃金は厚労省「賃金構造基本統計調査」の月収換算を参考に相場観を握ると比較がしやすくなります。
法制度が支える“働きやすさ”(知って安心)
勤務時間・休憩・仮眠、勤務間インターバル、ハラスメント防止などは法律や指針で整備されています。事業主は相談体制や再発防止策の整備が義務づけられており、都道府県の「医療勤務環境改善支援センター」等の支援を受ける取り組みも進んでいます。求人票や就業規則、面接での説明がこれらに沿っているかを確かめましょう。
退職理由ランキング(用途別サンプル)
・新卒層(病院調査):精神的健康/適性不安/実践力不安/人間関係/他施設関心
・経験者層(年代別):結婚・出産・育児/転居/家族の介護/自分の健康/夜勤負担・長時間労働
“自分の場合はどちらに近いか”を分けて考えると、次の職場で確認すべき条件が明確になります。
転職を前向きな一歩に変えるチェックリスト
□ 退職理由を「希望条件」に言い換えた(例:人間関係→相談窓口・面談頻度)
□ 年齢・家庭事情に合う勤務形態(常勤/日勤常勤/非常勤/オンコールの有無)を選んだ
□ 教育体制と評価のしくみを確認した(段階目標・面談)
□ 夜勤・残業の実態と仮眠環境を見学で確かめた
□ ハラスメント対策の運用を質問した(窓口・初動・再発防止)
これらは、退職理由の再発を防ぐ実践的な確認項目です。