小児の慢性疾患(喘息・糖尿病・腎疾患・心疾患など)は、長期的な治療や生活管理を必要とし、本人と家族双方に大きな心理的・社会的負担を与えます。
看護師は、成長段階ごとに適切なセルフケア支援を行い、子ども自身が**「病気と共に生活する力」**を育めるよう支援することが求められます。

国際的にも、慢性疾患児のセルフマネジメント支援は「家族中心ケア」「発達段階に応じた教育」「学校・地域連携」が不可欠とされています(AAP, 2012; WHO, 2020)。


セルフケア支援の基本的視点

  • 病気理解の促進
    年齢に応じた説明(幼児期は絵や比喩、学童期は病気の仕組み、思春期は将来への影響も含めて説明)。
  • 治療自己管理の促進
    薬の内服、吸入、血糖測定、食事管理を段階的に本人へ移行。
  • 生活の質(QOL)の維持
    学校生活・遊び・友人関係を尊重し、制限一辺倒にならない支援。
  • 家族と本人の協力体制
    親主導から、子ども自身の主体的関与へ移行。

成長発達段階ごとの支援

乳幼児期

  • 管理は親が中心。
  • 看護師は親への教育と心理的支援を重視。
  • 規則正しい生活リズムを家庭で実践できるよう支援。

学童期

  • 「なぜ薬を飲むのか」を理解し始める。
  • 学校での内服・吸入を自分で実施できるよう練習。
  • **学校との連携(担任・養護教諭)**が重要。

思春期

  • 自己管理移行期だが、反発・服薬拒否が増える。
  • 同年代との差に悩みやすいため心理社会的支援を強化。
  • 将来を見据えた「病気と共に生きる」主体的姿勢を育成。

看護師の役割

  • 教育者:子どもと家族に病状・治療・セルフケアをわかりやすく伝える。
  • コーディネーター:学校・地域・医療機関をつなぎ、生活全体を支援。
  • カウンセラー:不安・自己肯定感低下・将来の心配に寄り添う。
  • モデル:セルフケアを共に実施し、「できた!」という成功体験を積ませる。

家族への支援

  • 過保護や過干渉に偏らないようバランスを助言。
  • 「できる部分は子どもに任せる」姿勢を支援。
  • 家族内で役割分担を行い、一人に負担を集中させない。
  • きょうだいへの心理的配慮(嫉妬や孤独感の軽減)も忘れない。

SBAR報告例

  • S(状況)「10歳、糖尿病で入院中。自己血糖測定の練習を開始」
  • B(背景)「母親が管理してきたが、本人は学校での自己測定を希望」
  • A(評価)「針刺し不安はあるが、指導後に1回成功。自信を持ち始めている」
  • R(推奨)「本人のペースに合わせた練習継続を提案。学校連携に向け養護教諭へ情報共有を依頼」

ケーススタディ

Case:喘息を持つ小学生

  • 入院時は母親が全ての吸入を実施。
  • 退院前に本人が練習し、学校でも自立して吸入が可能に。
  • 母親も「任せられる」と自信を持ち、家庭での役割分担がスムーズに。

👉 教訓:小さな「できた経験」を積み重ねることがセルフケア支援の鍵。


学びの整理

  • 小児慢性疾患児には成長に応じたセルフケア支援が不可欠。
  • 看護師は教育者・コーディネーター・カウンセラーとして多面的に関与。
  • 家族には「過保護と放任のバランス」を助言し、全体で子どもを支える。
  • 成功体験の積み重ねが「病気と共に生きる力」を育む。

参考文献