慢性疾患を持つ子どもと家族を支える看護の意味

小児の慢性疾患は、喘息・糖尿病・腎疾患・心疾患など、長い期間にわたって管理が必要になる病気です。日常生活の中で治療を続けることは、子ども本人だけでなく、家族全体にも大きな負担をもたらします。

その中で看護師は、成長発達の段階に合わせて子どもの力を引き出し、**「病気とともに生活しながら自分らしく成長する力」**を育む支援を行うことが重要です。


セルフケア支援の基本的な視点

子どもが自分の病気と向き合いながら、無理なくセルフケアを進められるようにするためには、以下のような視点が欠かせません。

まず大切なのは、病気を理解する力を育てることです。幼児期には絵やたとえを使い、学童期には病気の仕組みを具体的に説明するなど、子どもの発達段階に合わせた伝え方が求められます。

次に、治療の自己管理を少しずつ任せていくことです。薬の服薬や吸入、血糖測定や食事管理などを、段階的に「できた」という経験につなげていくことが大切です。

また、生活の質(QOL)を守ることも忘れてはなりません。学校生活や遊びの時間が制限ばかりにならないように、楽しみを維持できるような工夫が必要です。

さらに、家族と本人が一緒に取り組む姿勢が重要です。親主導から少しずつ子ども自身が主体的に関わる形に移行できるように、看護師が橋渡し役を担います。


成長発達段階ごとのセルフケア支援

乳幼児期

この時期は親が中心となって管理を行います。看護師は、親に対して病気や治療の意味をわかりやすく説明し、日常生活に取り入れられる工夫を一緒に考えていきます。また、親が過度な不安を抱かないよう心理的な支えになることも重要です。

学童期

学童期になると「なぜ薬を飲まなければならないのか」といった理解が始まります。学校で服薬や吸入を行えるように練習を重ねるとともに、学校の担任や養護教諭との連携が不可欠です。子ども自身が「自分でできる」という経験を積むことで、自信が育まれます。

思春期

思春期は自己管理へと移行する大切な時期ですが、反発や服薬拒否が起こりやすくなります。同年代との違いに悩むこともあり、心理的なサポートがより必要になります。将来を見据えて病気と向き合えるよう、主体的に考える機会をつくることが求められます。


看護師が担う役割

看護師は教育者であり、コーディネーターであり、時にカウンセラーとしても寄り添います。子どもと家族にわかりやすく病状や治療を説明し、学校や地域、医療機関とをつなぐ役割を果たします。心理的な不安に寄り添いながら、セルフケアを一緒に実践して「できた」という体験を重ねていく姿勢も欠かせません。


家族への支援

家族は子どもを守ろうとするあまり、過保護になってしまうこともあります。逆に、子どもに任せすぎて負担が大きくなりすぎることもあります。看護師は、過保護と放任の間のちょうどよいバランスを助言しながら、家族全体で子どもを支えられるように導きます。

また、家族の役割分担を見直し、一人に負担が集中しないように調整することも大切です。さらに、きょうだいが孤独感や嫉妬を抱えないように、配慮や声かけを行うことも重要です。


ケースから学ぶ実践の知恵

喘息を持つ小学生の事例では、入院中は母親が吸入をすべて行っていました。しかし、退院支援の中で子ども自身が吸入を練習した結果、学校でも一人でできるようになりました。母親も「任せても大丈夫」と安心し、家庭での役割分担がスムーズになったのです。

このように、子どもが「自分でできた」という経験を重ねることが、セルフケアの自立につながっていきます。


学びの整理

小児慢性疾患のセルフケア支援は、成長発達に合わせて段階的に自立を促すことが重要です。
看護師は、教育・心理的支援・地域連携を通じて、子どもと家族に寄り添う存在となります。
家族には過保護でも放任でもない適度な関わり方を伝え、きょうだいも含めて全員が支え合える環境を整えることが、子どもの「病気とともに生きる力」を育むことにつながります。


参考文献