感染症と小児看護の重要性

小児は免疫機能が未熟であり、感染症に罹患しやすく、集団生活や家庭内での感染拡大リスクが高いことが特徴です。
入院時には隔離対応が必要になることが多く、子ども自身だけでなく、家族の心理的・生活的な負担も増大します。

看護師は、感染管理と家族支援を両立させながら、安心できる環境を整える役割を担います。本稿では、国際ガイドラインや最新エビデンスを踏まえ、小児感染症看護の要点を整理します。


小児に多い感染症と感染経路の理解

  • 飛沫感染:インフルエンザ、RSウイルス、百日咳
  • 空気感染:麻疹、水痘、結核
  • 接触感染:ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス

👉 基本は標準予防策+感染経路別予防策を徹底すること。
WHO(2021)およびCDC(2020)のガイドラインでも、小児感染症管理において「感染経路別予防策の徹底」が最重要とされています。


隔離対応の基本原則

個室またはコホート隔離

  • 空気感染:個室・陰圧室を使用
  • 接触・飛沫感染:同一病原体の児をコホート隔離

PPE(個人防護具)の徹底

  • 手袋・ガウン・マスク(必要時はN95)
  • 入退室の際に適切に着脱

環境整備

  • 玩具や器具は専用化または消毒
  • 嘔吐物や便は次亜塩素酸ナトリウムで処理

入退室管理

  • 医療スタッフ・家族の動線を明確化し、二次感染を防止

看護師が行う観察の視点

  • 全身状態:体温、意識、食欲、活動性
  • 呼吸器症状:咳嗽、鼻汁、呼吸困難の有無
  • 消化器症状:下痢・嘔吐回数、脱水徴候
  • 皮膚症状:発疹、水疱、掻痒感
  • 合併症の兆候:肺炎、中耳炎、脳炎 など

👉 合併症リスクを早期に把握することで重症化予防につながります。


家族支援の実際

感染管理の説明

  • 「なぜ隔離が必要か」を丁寧に説明し、家族の理解を得る
  • 家族自身もマスク・手洗い・衣服交換を徹底

心理的支援

  • 親は「子どもがかわいそう」「一緒に過ごせない」と罪悪感を抱くことが多い
  • 面会・付き添い方法を工夫し、親子の絆を守る

生活面の支援

  • 長期隔離では兄弟のケアや家庭生活への影響も大きい
  • 退院後も感染予防の継続方法を助言

SBAR報告例

  • S(状況):「2歳児、RSウイルス感染症で隔離中。呼吸状態が悪化」
  • B(背景):「入院2日目。これまでSpO₂ 95%前後で安定」
  • A(評価):「現在SpO₂ 89%、陥没呼吸あり。咳嗽強く経口摂取も不良」
  • R(推奨):「酸素投与開始。吸引や輸液管理を含め、医師の再評価をお願いします」

ケーススタディから学ぶ

Case:ノロウイルスによる胃腸炎の集団発生

  • 入院した児の家族が「きょうだいも次々と下痢」と訴え
  • 看護師が家庭での消毒方法(次亜塩素酸ナトリウム使用)と手洗いの徹底を指導
  • 家族全体の予防意識が高まり、感染拡大を抑制できた

👉 家族教育は二次感染防止に直結する重要な看護介入である。


学びの整理

  • 小児感染症看護の基本は標準予防策+隔離管理の徹底
  • 感染経路を理解し、PPEや環境整備を確実に実施する
  • 家族には「隔離の意味」と「家庭でできる予防法」をわかりやすく伝える
  • 隔離に伴う心理的・生活的負担に寄り添い、家族を含めた包括的な看護支援を行う

参考文献(リンク有効)