予防接種支援における看護師の役割

予防接種は小児を感染症から守る最も有効な公衆衛生手段の一つです。しかし、接種への不安や副反応への懸念から、保護者が戸惑う場面も少なくありません。
看護師は、安全な接種管理と心理的ケアを両立させるキーパーソンとして、子どもと家族双方に寄り添い、安心できる医療体験を提供する必要があります。


予防接種の基本プロセス

接種前評価

  • 問診票の確認(既往歴・アレルギー・体調)
  • 体温測定・全身状態の観察
  • 禁忌の有無(重度アレルギー反応、急性疾患 など)

接種時のケア

  • 年齢に応じた声かけ(乳児は抱っこで安心、幼児は短くわかりやすく)
  • 適切な体位保持(親子同席が望ましい)
  • 接種部位確認(大腿外側・上腕三角筋など)

接種後観察

  • 30分間の観察でアナフィラキシー兆候を確認
  • 発疹・呼吸困難・意識変容の有無をチェック

看護師による工夫とケアの実際

痛み・恐怖心への配慮

  • 幼児には「注射は体を守るお薬」とシンプルに説明
  • 局所麻酔テープや冷却で疼痛軽減を図る場合もある

安心できる環境づくり

  • 家族の抱っこや声かけで不安を和らげる
  • 泣くことを自然な反応として受け止める

安全確保

  • 体動による針の逸脱防止
  • 複数スタッフで支える場合は、子どもの尊厳を守りつつ実施

家族への説明と支援

予防接種の目的

  • 「重い感染症を防ぎ、子どもの命を守る」ことを明確に伝える

副反応への理解促進

  • 一過性の発熱・発赤・腫脹はよくある副反応
  • まれに強いアレルギー反応があるため、異常時は受診を勧める

接種後の生活指導

  • 激しい運動は控える
  • 発熱時は安静・水分補給・必要に応じて解熱薬使用

接種スケジュール管理

  • 接種間隔や追加接種の重要性を強調
  • スケジュール管理アプリや母子手帳の活用を勧める

SBAR報告例

  • S(状況):「1歳児、MRワクチン接種後10分で発疹出現」
  • B(背景):「既往歴に重度アレルギーなし。母親が皮膚の赤みを訴えた」
  • A(評価):「発疹は全身性ではなく、呼吸・意識に変化なし」
  • R(推奨):「アナフィラキシーの可能性を除外するため、医師に再評価をお願いします」

ケーススタディ ― 予防接種を嫌がる3歳児

接種前から泣いて暴れた3歳児。
母親が抱っこし、看護師は「終わったらシールをあげるよ」と声をかけながら実施。
接種後には泣きやみ、笑顔でシールを受け取り、母親も「安心しました」と語った。

👉 年齢に応じた声かけとご褒美の工夫が、接種体験を前向きにする。


学びの整理

  • 予防接種は小児の命を守る最重要予防医療
  • 看護師は接種前評価・安全管理・副反応観察を徹底する。
  • 子どもの心理に配慮したケアと家族支援は不可欠。
  • 副反応説明とスケジュール管理の共有が、長期的な健康支援につながる。

参考文献