発作時の命を守る看護師の役割

小児喘息は気道に慢性的な炎症があることで、発作時には急激に呼吸が苦しくなり、場合によっては呼吸不全に進行するリスクもある病気です。発作の対応が遅れれば生命に関わるため、看護師がいかに早く状態を見抜き、適切に処置できるかが子どもの予後を大きく左右します。

また、急性期のケアだけではなく、家族に「日常生活でどのように予防するか」「再発をどう防ぐか」を伝えることも、看護師の大切な役割です。


発作の重症度を見極める力

喘息発作は軽症から最重症まで幅があります。軽い咳や息苦しさの段階から、会話が困難になったりチアノーゼが出たりする重症の段階まで、急速に進むことも少なくありません。

観察の基本は「努力呼吸の程度」と「SpO₂(酸素飽和度)」です。鼻翼呼吸や陥没呼吸が見られる場合、すでに呼吸に大きな負担がかかっています。さらに、SpO₂が90%を下回れば重症と考え、即時に医師への報告と処置が必要になります。


急性期に行うケアの実際

発作時には、子どもの体が少しでも楽になるように体位を工夫します。セミファウラー位や起座位は呼吸を助ける効果があり、第一歩となります。SpO₂が下がっていれば酸素投与を開始し、必要に応じてリザーバーマスクを使用します。

薬物療法は医師の指示のもとで行われますが、β₂刺激薬の反復吸入、ステロイドの全身投与は早期に行われることが推奨されています。吸入後は15分程度で効果を確認し、改善が見られない場合は追加の治療を検討する必要があります。


看護師が注視すべき観察の視点

発作時の子どもを前にしたとき、看護師の観察は治療方針を左右する重要な手がかりになります。努力呼吸の程度、会話がどの程度できるか、冷感や頻脈といった循環動態の変化は危険サインです。

呼吸音は特に注意が必要です。笛のような音(wheezing)が弱まり、やがて呼吸音がほとんど聞こえなくなる「silent chest」に至ることがあります。これは呼吸が止まりかけている重篤な兆候であり、迅速な対応が欠かせません。


家族への支援と教育の重要性

発作が起きた際、家族が落ち着いて行動できるかどうかで、救急搬送までの時間や初期対応の質が変わります。看護師は、発作時に何をすべきかを家族にわかりやすく伝え、安心感を与えることが大切です。

再発予防のためには、日常的なピークフローメーターの使用や、夜間の咳や覚醒といった前駆症状を見逃さないことが求められます。吸入薬(ICSやLABA)の正しい使用方法、家庭でのダニ・ほこり対策、受動喫煙の回避といった生活環境の整備も重要です。

また、「会話が困難になった」「SpO₂が90%以下」「強いチアノーゼがある」「意識障害が出た」といった場合には、迷わず救急搬送する必要があることを家族に具体的に伝えましょう。


臨床から学ぶ実際のケース

小学生が夜間に重度の発作を起こし、救急搬送された事例があります。到着時にはSpO₂が89%、会話も困難な状態でした。酸素投与、サルブタモール吸入、ステロイド静注で徐々に改善し、その後は安定。家族には「日常的な吸入薬の予防使用」と「発作時の早期受診」を改めて指導しました。

このケースは、急性期対応が命を救うこと、そして再発予防の教育が再入院を防ぐことにつながることを示しています。


看護実践の振り返り

小児喘息発作は進行が速く、重症化すれば呼吸停止に至ることもあるため、看護師の迅速な判断と処置が子どもの命を守ります。

急性期には体位保持、酸素投与、吸入薬やステロイドの早期投与を行い、観察は呼吸音や努力呼吸、意識状態を丁寧に行うことが求められます。

さらに、家族に発作時の行動指針と再発予防の知識を伝えることで、子どもが家庭でも安心して生活できるよう支えることが、看護師に求められる大切な役割です。


参考文献