小児のけいれんを理解する視点
小児のけいれん発作は、発熱や感染、頭部外傷、代謝異常など多様な要因で起こります。多くは短時間で収束しますが、重積状態へ進行すると命に直結することもあります。
看護師は、「発作を安全に乗り切らせ、重症化の兆候を見逃さない」ことが大切です。
けいれん発作の主な種類
小児のけいれんにはいくつかのタイプがあり、背景の理解が必要です。
- 熱性けいれん:生後6か月〜5歳に多く、発熱を契機に全身性のけいれんを起こす
- てんかん性けいれん:部分発作や全般発作などを繰り返し発症する
- 症候性けいれん:髄膜炎や脳炎、代謝異常、頭部外傷などに伴って生じる
それぞれ原因や対応が異なるため、観察と記録が診断につながることを意識しましょう。
初期観察で確認すべきこと
けいれん発作の対応は「観察」が基本です。
- 発作の開始時刻と持続時間(5分以上で重積を疑う)
- けいれんの様子(左右差、全身性か部分性か、眼球偏倚、チアノーゼ)
- 呼吸状態(努力呼吸、SpO₂、皮膚色の変化)
- 意識レベル(発作後に回復するか、傾眠が続くか)
- 誘因や既往(発熱、感染、てんかん治療歴、家族歴)
発作の詳細な観察と記録は、その後の診断と治療の鍵になります。
けいれん発作時の初期対応の流れ
安全を確保しながら、看護師ができることを落ち着いて進めていきます。
安全確保
- ベッド柵を上げる
- 無理に体を押さえず、けいれんの動きを妨げない
- 嘔吐に備えて側臥位を保持し、誤嚥を予防
気道管理
- 舌根沈下や分泌物による閉塞を防ぐ
- 必要に応じて吸引を準備
酸素投与
- SpO₂低下やチアノーゼが見られる場合は速やかに開始
バイタル測定
- 心拍数、血圧、SpO₂を継続的に観察
薬物療法(医師指示下)
- ジアゼパム坐薬や静注を用いる
- 反応がなければフェニトインなどへの移行を検討
けいれん後の観察で注目する点
発作後の観察も看護師の大切な役割です。
- 意識がどのくらいで回復するか
- 呼吸が安定しているか
- 麻痺や眼球運動の異常が残っていないか
- 発熱や感染の兆候があるか
家族支援の実際
けいれんを目の前にした家族は強い不安を抱きます。看護師は、その心情に寄り添いながら説明と支援を行います。
- 「多くは数分で治まります」と安心感を与える
- 発作の様子をスマホで記録してもらうことが診断に有効であると伝える
- 服薬管理や再発予防の大切さを説明する
- 家庭での対応(時間を計測、体位保持、救急要請の目安)を具体的に伝える
SBARで整理する報告例
S:「2歳児、発熱中に全身けいれんが5分間持続」
B:「熱性けいれんの既往なし。入院中で発熱39℃」
A:「SpO₂ 89%、チアノーゼあり。ジアゼパム坐薬投与後もけいれん持続」
R:「静注薬の追加投与と酸素投与を開始しました。気管挿管の可能性も含め、医師の指示をお願いします」
ケースから学ぶ実践
3歳児が発熱中に全身けいれんを起こしました。家族が発作の時間を計測しており、4分で自然に収束。看護師は詳細を報告でき、不要な薬物投与を避けられました。
→ 家族協力と観察記録が、適切な判断につながった事例です。
看護実践のふり返り
小児のけいれん発作は多くが一過性ですが、5分以上持続する場合は緊急対応が必要です。看護師は、安全確保・気道確保・酸素投与を速やかに行い、観察記録を正確に残すことが大切です。また、家族に安心を与える説明と、再発時の対応教育も欠かせません。
参考文献
- 日本小児神経学会. 小児てんかん診療ガイドライン
- Freeman, J. M., et al. (2002). Febrile seizures: Clinical practice guideline. Pediatrics, 110(2), 421–426. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12165580/
- World Health Organization. (2013). Pocket book of hospital care for children: guidelines for the management of common childhood illnesses.