小児の無呼吸発作とは何か

新生児や乳児は呼吸中枢が未熟であり、呼吸が突然止まる無呼吸発作(apnea)を起こすことがあります。発作は数秒から数十秒続くことが多く、酸素不足や徐脈を伴い、場合によっては生命に直結する重大なリスクとなります。
看護師は「観察による早期発見」と「確実な初期対応」によって、子どもの命を守る役割を担います。


無呼吸発作が起こる主な原因

無呼吸の背景には複数の要因があります。

  • 未熟児:早産による呼吸中枢の未発達
  • 感染症:肺炎、敗血症、髄膜炎など
  • 循環・代謝異常:心疾患、低血糖、電解質異常
  • 気道閉塞:舌根沈下、分泌物の貯留、胃食道逆流

看護師は発作の原因を推測しながら観察を続け、医師の診断につなげていく必要があります。


発作時の観察で大切にしたいこと

臨床ではモニターだけでなく「五感を使った観察」が大切です。

  • 呼吸のパターン:規則的か不規則か、努力呼吸の有無
  • 皮膚の色:口唇や爪のチアノーゼ、顔面蒼白
  • 心拍数・SpO₂:低下がないかを確認
  • 筋緊張:弛緩やけいれんを伴っていないか
  • 発作との関連:授乳直後、体位変換後など誘因を意識して観察

無呼吸発作が起きたときの初期対応

迅速かつ冷静な対応が子どもの安全につながります。

  1. 呼吸状態の確認:胸郭の動き、SpO₂、心拍数を評価
  2. 刺激:背中を軽く叩く、足底を刺激して呼吸を促す
  3. 気道確保:頭部後屈や下顎挙上で舌根沈下を防ぐ。分泌物があれば吸引
  4. 酸素投与:カニュラやバッグバルブマスクで補助
  5. 心拍が60/分未満:心肺蘇生(新生児蘇生法に準じる)を開始
  6. 医師への報告:発作の持続時間、処置内容、バイタル変動を詳細に伝える

看護師に求められる継続的なケア

無呼吸発作は繰り返し起こることが多いため、日常的な観察とケアが欠かせません。

  • モニタリング:心拍・呼吸・SpO₂を常に監視
  • 体位管理:呼吸が保たれる姿勢を整える(仰臥位+頭部軽度後屈)
  • 授乳との関連:逆流による閉塞を防ぐため、授乳後の観察を徹底
  • 環境調整:過度な保温や冷却を避け、体温を安定させる
  • 薬物療法の観察:カフェイン投与時は副作用(頻脈・嘔吐)に注意

家族への支援と教育

家族は無呼吸発作を目の当たりにして強い不安を抱きます。看護師は次のような支援を心がけます。

  • 安心感の提供:「常にモニターで観察している」と伝える
  • 在宅移行時の指導:アラーム対応方法やBLS(一次救命処置)の教育
  • 不安軽減:発作があっても迅速に対応可能な体制を示し、家族の安心につなげる

SBARで整理する報告例

S:「生後2か月児、無呼吸発作が約25秒持続」
B:「早産児。授乳後にSpO₂ 78%、心拍80/分まで低下」
A:「背部刺激・酸素投与で呼吸再開し、SpO₂ 96%へ回復」
R:「医師の再評価をお願いします。採血・胸部X線・薬物調整をご検討ください」


ケースで学ぶ臨床場面

夜間、早産児のモニターアラームが作動。駆けつけると無呼吸発作が持続しており、背部刺激では改善せず。バッグバルブマスクによる換気で回復し、その後は医師の判断でカフェイン療法が導入されました。
早期発見と迅速な対応が重症化を防いだ好例です。


看護実践の振り返り

小児の無呼吸発作は短時間で低酸素や徐脈に進行し、生命に危険を及ぼします。看護師は、刺激・気道確保・酸素投与を基本に、正確な観察と報告を行う必要があります。また、家族に安心を与えつつ、在宅移行後も安全に対応できるよう支援することが重要です。


参考文献

  • 日本新生児成育医学会. 新生児蘇生法ガイドライン
  • Eichenwald, E. C. (2016). Apnea of Prematurity. Pediatrics, 137(1), e20153757. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26644488/
  • World Health Organization. (2013). Pocket book of hospital care for children.