小児の点滴管理に求められる視点
小児は血管が細く、皮膚も薄いため、点滴漏れや浸潤が起こりやすい特徴があります。軽度であれば発赤や腫脹で済みますが、薬剤の種類によっては組織障害や壊死に進行する危険性もあります。
だからこそ看護師には、「早期発見」「適切な初期対応」「家族への説明」が求められます。
点滴漏れ・浸潤を見逃さない観察ポイント
小児は「痛い」と言葉で伝えられないことが多く、非言語的サインを見極めることが大切です。
- 注入部位の発赤・腫脹・蒼白
- 冷感や熱感など皮膚の変化
- いつもと違う泣き方や不穏な様子
- 滴下不良やアラームの頻発
- テープや副木の下に異常な圧痕
リスクが高い場面とは
点滴漏れ・浸潤は、特に以下のような状況で起こりやすくなります。
- 血管が細い乳児や低体重児
- 活発に動く幼児で固定が外れやすい場合
- 高浸透圧・刺激性の薬剤(抗がん薬、高濃度ブドウ糖液、K製剤など)
- 長時間にわたる持続点滴
点滴漏れを疑った時の初期対応
発見時の対応が早ければ、重症化を防ぐことができます。
- すぐに点滴を停止(ルートは抜去せず医師の確認を待つ)
- 部位を観察:腫脹・発赤・冷感・水疱の有無を確認
- 逆血が可能であれば薬液を吸引
- 薬剤ごとの対応(非刺激性は冷罨法、抗がん薬は解毒薬使用、血管収縮薬は局所注射など)
- 患肢を挙上して腫脹を軽減
- 新しいルートを確保して治療を継続
看護師が記録に残すべき内容
トラブル発生時の記録は、経過を正確に伝えるために重要です。
- 発見時刻と投与中の薬剤名・濃度・注入量
- 発赤や腫脹の範囲と皮膚の状態
- 患児の反応(啼泣、不穏、表情の変化など)
- 実施した処置とその後の変化
- 必要に応じて写真記録(施設規定に従って)
点滴漏れを防ぐための工夫
予防は看護師の巡視と固定の工夫にかかっています。
- 乳児では副木を使った安定した固定、幼児は井桁状のテープ固定
- 関節部を避けた穿刺部位の選択(手背より前腕が安定)
- 30分ごとの巡視を徹底、特に薬剤変更や体動後は重点的に確認
- アームボードやソフト包帯を活用して不要な動きを制御
- 家族にも「泣き方や腕の動かし方の変化」を伝えてもらう
家族への説明と安心の提供
家族に協力を得ることで、早期発見につながります。
- 「点滴液が外に漏れることがあります」と事前に説明
- 発赤や腫脹に気づいたらすぐに知らせてもらう
- 発生時は迅速に対応していることを伝えて不安を軽減
- 必要があれば「痕が残る可能性」も正直に説明し、経過観察を一緒に進める
SBAR報告の例
S:「1歳児、右手背からの点滴で腫脹と発赤を認めた」
B:「乳酸リンゲル液20mL/h投与中。30分前から滴下不良。患児は泣いて腕を動かしていた」
A:「点滴漏れ・浸潤の可能性あり。腫脹範囲は2×3cm、冷感あり」
R:「点滴停止、患肢挙上・冷罨法を実施。新ルート確保の指示をお願いします」
臨床でのケースから学ぶ
2歳児の補液中、体動でルートが外れて浸潤が発生。しかし看護師が「泣き方の変化」に気づき、早期に停止と処置を行ったため、合併症なく回復できた。
→ 観察力と即時対応が、子どもの安全を守る鍵になる。
看護実践を振り返って
小児は点滴漏れや浸潤のリスクが高く、わずかな変化も見逃さない観察が必要です。
発見したら直ちに点滴を停止し、状況に応じた処置を行うこと。そして、記録・報告・家族支援を組み合わせることで、子どもの安全をチーム全体で守ることができます。