子どもの栄養を支える看護の重要性

小児にとって栄養は、成長・発達・回復力の基盤です。手術前後は絶食や代謝ストレスにより栄養不良に陥りやすく、体力の低下や回復の遅れにつながります。
そのため、「できるだけ早く、安全に栄養を再開すること」が周術期看護の大きなテーマです。


周術期に栄養管理が必要な理由

  • 手術ストレスによる筋肉分解を抑える
  • 傷の治りを早める
  • 感染症にかかりにくくする
  • 成長発達の遅れを防ぐ
  • 退院後の生活をスムーズにする

栄養のとり方を選ぶポイント

経口摂取(できるだけ最優先)

  • 飲み込みができ、消化機能に問題なければ口から開始
  • 好きな食べ物や食べやすい形態を取り入れると摂取が進みやすい

経腸栄養(胃管や腸管チューブを使用)

  • 消化管が使える場合は手術後24時間以内に開始が望ましい
  • 腸管バリアを守り、感染予防にもつながる

静脈栄養(TPN)

  • 腸を使えない時に選択
  • 中心静脈カテーテルを使うため感染リスクに注意
  • 血糖や電解質の変動をこまめにチェック

小児特有の特徴と注意点

  • 基礎代謝が高いため、栄養不足がすぐに現れる
  • グリコーゲンの蓄えが少なく低血糖になりやすい
  • 水分出納の変化が早く、尿量や体重の観察が不可欠
  • 栄養不足が続くと、発達の遅れにつながることも

看護師が行う観察とケア

経口摂取の観察

  • 嘔気・嘔吐がないか
  • 食べた量や内容を記録
  • 少しずつ回数を分けて与える

経腸栄養の観察

  • チューブの位置確認(pHやX線での確認)
  • 注入速度と量を徐々に調整
  • 下痢・嘔吐・腹部膨満がないか観察
  • チューブ固定部位の皮膚ケア

静脈栄養の観察

  • ルート感染のサイン(発赤・発熱・分泌物)
  • 滴下速度や投与内容をダブルチェック
  • 血糖・電解質・肝機能・脂質の検査値変動に注意

家族への支援と説明

  • 「なぜ早く栄養を始めるのか」をわかりやすく伝える
  • 摂取が進まない時でも焦らず、少しずつ改善していくことを説明
  • 在宅に移行した後も食事や水分管理が続くため、家族への教育が大切

SBARでの報告例

S:「術後24時間、小児患者で経腸栄養を開始したが嘔吐が見られた」
B:「開腹手術後。チューブ位置は胃内確認済み。注入速度20mL/hで開始」
A:「嘔吐により消化管耐容性低下の可能性。バイタルは安定」
R:「注入を一時中止。速度を半分にして再開可否を医師に確認したい」


ケースで学ぶ実践例

学童期の開腹術後、術後翌日から経腸栄養を10mL/hで開始。嘔気なく耐えられたため20mL/hへ増量。3日目には経口摂取へ移行し、回復がスムーズに進んだ。
少量からの開始と継続的な観察が成功のカギ


看護実践の振り返り

小児の周術期栄養管理は「早期経腸栄養」を基本とし、必要に応じて経口・経腸・静脈を組み合わせて不足を補います。
看護師は摂取量・消化管症状・ルートトラブルを丁寧に観察し、家族への説明と安心の提供を行うことで、回復力と成長を守ることができます。