各言語の発音は、カタカナで近い音を表しています。
言語 | 翻訳(女性) | 読み方 | 翻訳(男性) | 読み方 | 注釈 |
---|---|---|---|---|---|
英語 | Nurse | ナース | Nurse | ナース | 一般的な表現 |
中国語(簡体字) | 护士 | フゥシー | 男护士 | ナンフゥシー | 男护士は比較的新しい言葉で、看護師全般を指す护士も使われることが多い |
中国語(繁体字) | 護士 | フゥシー | 男護士 | ナンフゥシー | 男護士は比較的新しい言葉で、看護師全般を指す護士も使われることが多い |
ヒンディー語 | नर्स (Nars) | ナース | नर्स (Nars) | ナース | |
ベンガル語 | নার্স (Nars) | ナルス | নার্স (Nars) | ナルス | |
日本語 | 看護師 | カンゴシ | 看護師 | カンゴシ | |
パンジャブ語 | ਨਰਸ (Nars) | ナルス | ਨਰਸ (Nars) | ナルス | |
ジャワ語 | Perawat | プラワット | Perawat | プラワット | |
ロシア語 | Медсестра (Medsestra) | メドセストラ | Медбрат (Medbrat) | メドブラート | |
ドイツ語 | Krankenschwester | クランケンシュヴェスター | Krankenpfleger | クランケンプフレーガー | |
フランス語 | Infirmière | アンフィルミエール | Infirmier | アンフィルミエ | |
イタリア語 | Infermiera | インフェルミエラ | Infermiere | インフェルミエーレ | |
スペイン語 | Enfermera | エンフェルメーラ | Enfermero | エンフェルメーロ | |
ポルトガル語 | Enfermeira | エンフェルメイラ | Enfermeiro | エンフェルメイロ | |
アラビア語 | ممرضة (Mumarrida) | ムマルリダ | ممرض (Mumarrid) | ムマルリド | |
スワヒリ語 | Muuguzi | ムウグジ | Muuguzi | ムウグジ | |
ヨルバ語 | Nọọsi | ノーシ | Nọọsi | ノーシ |
- 各言語の発音は、カタカナで近い音を表していますが、正しい発音を知りたい場合は、その言語を話す人の発音を参考にすると良いでしょう。
- また、男性の看護師と女性の看護師で違う言葉を使う言語では、看護師全体を指すときに女性の言葉がよく使われます。
1. 英語:Nurse (ナース) —「栄養を与え、育む者」
世界の医療現場で最も広く使われる共通言語です。
- 単語: Nurse
- 発音: ナース
- 語源とニュアンス: 「Nurse」の語源は、ラテン語の「nutrire(ニュートリール)」に由来します。これは「栄養を与える」「養う」「育む」という意味を持つ言葉です(「Nutrition=栄養」と同じ語源です)。 歴史的に、看護は「母性的なケア」や「養育」と強く結びついており、この言葉はその本質を表しています。
- 性別による違い: 単語自体に性別の区別はありません。日本語の「看護師」と同様、Nurse は男女共通の職名です。 かつては女性の「Nurse」と区別して男性看護師を「Male Nurse」と呼ぶこともありましたが、近年ではその区別自体が不要であるという認識が広まり、性別を問わず「Nurse」と呼ばれるのが一般的です。
- 専門性: 英語圏(特に北米)では、資格による区別が厳格です。日本の「正看護師」にあたるのが「Registered Nurse」(登録看護師)、通称「RN」です。また、准看護師に近い資格として「Licensed Practical Nurse (LPN)」などがあります。
2. 中国語(普通話):护士 (Hùshi / フーシー) —「護(まも)る専門家」
使用人口が最も多い言語の一つである中国語では、非常に力強い意味を持つ言葉が使われています。
- 単語: 护士 (簡体字) / 護士 (繁体字)
- 発音: フーシー (Hùshi)
- 語源とニュアンス: これは漢字二文字の組み合わせです。「护 (護)」は「保護する」「護(まも)る」という意味です。「士 (シ)」は、日本語の「弁護士」や「武士」の「士」と同じく、「特定の技術や知識を持つ専門家・スペシャリスト」を意味します。 つまり「护士」とは、直訳すると「保護する専門家」「守護するスペシャリスト」となり、患者を守るという強い意志が込められた職名です。
- 性別による違い: 単語自体は中立的ですが、男性看護師を区別して呼ぶ際は「男护士 (Nán hùshi)」と表現することがあります。
3. スペイン語:Enfermero / Enfermera (エンフェルマーロ / ラ) —「病める者に関わる者」
中南米を含む非常に広範な地域で使用されています。
- 単語: Enfermero (男性) / Enfermera (女性)
- 発音: エンフェルマーロ / エンフェルマーラ
- 語源とニュアンス: この言葉の語源は、ラテン語の「infirmus(インフィルムス)」です。これは「in-(非ず)+ firmus(頑丈な・固い)」、すなわち「頑丈ではない状態=病弱な、病気の」という意味になります。 「病気」を意味する「enfermedad」も同じ語源です。「Enfermero/a」とは、文字通り「病める人(the infirm)のケアをする者」という意味を持ちます。
- 性別による違い: スペイン語を含む多くのロマンス諸語では、名詞や形容詞が性別によって変化します。看護師も同様で、男性看護師は「Enfermero」、女性看護師は「Enfermera」と、明確に区別して呼ばれます。
4. フランス語:Infirmier / Infirmière (アンフィルミエ / エール)
スペイン語と同じ語源を持つ言語です。
- 単語: Infirmier (男性) / Infirmière (女性)
- 発音: アンフィルミエ / アンフィルミエール
- 語源とニュアンス: スペイン語と全く同じく、ラテン語の「infirmus(病弱な)」に由来します。「病める者のそばにいる専門家」という意味合いを持ちます。
- 性別による違い: フランス語も文法的に性別を区別するため、男性は「Infirmier」、女性は「Infirmière」となります。
5. ドイツ語:Krankenschwester (クランケンシュヴェスター) —「病める者の姉妹」
ドイツ語の呼び名には、看護という職業のキリスト教的な歴史が色濃く残っています。
- 伝統的な単語(女性): Krankenschwester
- 発音: クランケンシュヴェスター
- 語源とニュアンス: これはドイツ語特有の複合名詞です。「Kranken(クランケン)」は「病気の人々」を、「Schwester(シュヴェスター)」は「姉妹」または「(修道会の)シスター」を意味します。 つまり、直訳は「病める者たちの姉妹(シスター)」です。これは、近代看護がナイチンゲール以前、主に修道女(シスター)による献身的なケアによって担われてきた歴史を直接的に反映しています。
- 伝統的な単語(男性): Krankenpfleger (クランケンフレーガー) 「Pfleger(フレーガー)」は「ケアする人・介護者」を意味する男性名詞です。
- 性別による違い(現代): この伝統的な性別による呼称を統一するため、2004年に法律が改正され、現代の正式な国家資格名は「Gesundheits- und Krankenpfleger(男性形)」および「Gesundheits- und Krankenpflegerin(女性形)」となりました。「健康と病気のケアラー」といった意味になります。 ただし、日常会話では今もなお、愛情や尊敬を込めて「シュヴェスター(シスター)」と呼ばれることが多くあります。
6. 韓国語:간호사 (Ganhosa / カノサ) — 日本語と共通する「看護師」
最後に、日本と非常に関連性の高い韓国語です。
- 単語: 간호사 (ハングル表記)
- 発音: カノサ (Ganhosa)
- 語源とニュアンス: これは「漢字語(Sino-Korean)」であり、ハングルで書かれたこの単語に対応する漢字(ハンチャ)は、日本語と全く同じ「看護師」です。
- 文化的な共通点(最重要): この点は非常に示唆に富んでいます。日本がかつて女性看護職を「看護婦(かんごふ)」と呼んでいた時代、韓国でも同様に「看護婦(간호부 / カノブ)」または「看護員」という呼称が使われていました。 しかし、職業としての専門性の確立と男女平等の観点から、両国はほぼ同じ時期(※韓国は2000年代初頭、日本は2002年)に法律を改正しました。 両国とも、「女性」を意味する「婦 (Fu / Bu)」という文字を外し、性別を問わない、より高度な専門家を意味する「師 (Shi / Sa)」という文字(師匠、教師などに使われる文字)に置き換えることで、職業的地位の向上を図りました。 これは、東アジアにおける「看護」が、単なるケア労働から高度な「専門職」へと移行した歴史的経緯を共有している証と言えます。
言語を超えた看護の「専門性」
このように、世界の言語を紐解くと、看護師という職業のルーツが「養育(Nurse)」「守護(护士)」「病者の介助(Enfermero)」「宗教的奉仕(Krankenschwester)」など、多様な概念に基づいていることが分かります。
そして現代においては、日本や韓国の事例のように、性別を超えた高度な「専門職(=師)」としてその地位が確立されてきていることも、世界共通の重要な流れと言えるでしょう。