看護師の皆さん、日々の業務お疲れ様です。転職活動における最大の関門である「面接」は、あなたの看護スキルや経験を伝えるだけの場ではありません。面接での立ち振る舞い、つまり「マナー」は、採用担当者があなたの「人柄」と「看護師としての適性」を判断する上で、最も重要な評価基準となります。

一般的なビジネスマナーはもちろんのこと、医療従事者特有の「注意点」が存在します。この記事では、新卒・転職者を問わず、看護師の面接で合否を分ける「マナーと注意点」を、その理由(信頼性)と共に時系列で徹底的に解説します。


なぜ看護師の面接マナーは厳しく評価されるのか

看護師の面接官(看護部長や師長)は、一般的な企業の採用担当者とは異なる、医療専門職としての厳しい視点を持っています。あなたのマナーは、以下の3つの「看護師適性」に直結するものとして評価されます。

1. 「清潔感」= 感染対策への意識

服装の乱れや派手なメイク、伸びた爪は、単なる「だらしなさ」ではなく、「衛生観念の欠如」「感染対策への意識の低さ」という、看護師として致命的な欠陥と見なされます。

2. 「協調性」= チーム医療への適性

医療はチームで行われます。面接中の話し方や聞く姿勢は、そのまま「患者さんや家族への対応力」「医師や他職種との円滑なコミュニケーション能力」として評価されます。

3. 「責任感」= 医療安全への意識

時間を守る、準備を怠らないといった基本的なマナーは、「安全に業務を遂行できるか」「命を預かる仕事への責任感」の表れとして判断されます。


【準備編】面接前のマナーと最重要の注意点

面接は、家を出る準備の段階から始まっています。

時間厳守:5分前到着の「鉄則」

時間厳守は社会人の基本ですが、看護師の面接では特に重要です。

到着時間の確認と予備時間

面接場所までの所要時間を事前に正確に確認し、交通機関の遅延なども考慮して余裕を持って出発します。

注意点:「早すぎる到着」も迷惑になる

遅刻は論外ですが、約束の15分も20分も前に訪問するのは、多忙な医療現場において「相手の都合を考えられない人」というマイナス評価につながります。 約束の時間(面接開始時間)の5分から10分前に受付に到着するのが、最も礼儀正しいマナーです。

服装と身だしなみ:「清潔感」こそがすべて

服装はスーツ(黒・紺・グレーなど)が基本です。しかし、それ以上に重要なのが「清潔感」です。

髪型・髪色

髪が肩にかかる長さの場合は、必ず一つにまとめます(シニヨンやお団子がベスト)。お辞儀をした際に、サイドの髪が顔にかからないよう、ピンなどでしっかり留めてください。髪の色は、黒か暗い茶色(ナチュラルブラウン)が原則です。

メイク(化粧)

ノーメイクは「体調が悪そう」「社会人マナー違反」と見なされNGです。逆に、ラメの強いアイシャドウや濃い口紅といった派手なメイクも、医療現場にふさわしくありません。「健康的」に見えるナチュラルメイクを心がけてください。

爪・アクセサリー(最大の注意点)

これは看護師採用における絶対的な基準です。爪は必ず短く切りそろえてください。 マニキュア、ジェルネイル、ネイルアートは(透明であっても)厳禁です。「患者さんを傷つけるリスク」「細菌の温床となる衛生上のリスク」を理解していないと判断されます。アクセサリー類は結婚指輪以外、すべて外していきます。

香り(匂い)

香水や香りの強い柔軟剤は絶対に使用しないでください。病院には、化学療法中の方や呼吸器疾患の方など、匂いに極めて敏感な患者さんが多くいます。そこへの配慮ができないと判断されます。喫煙者の方は、面接前の消臭ケアを徹底してください。

書類の準備

必要な書類はクリアファイルに挟み、すぐに取り出せるようA4サイズのバッグに入れておきます。

  • 履歴書、職務経歴書(コピーも一部持参すると安心です)
  • 看護師免許証(原本またはコピーの持参を指示される場合があります)
  • 筆記用具、病院の資料

【当日・受付編】第一印象を決定づけるマナー

病院の敷地内に入った瞬間から、あなたは評価されています。

受付での振る舞い

コート類は、病院の建物に入る前に必ず脱ぎ、きれいに畳んで腕にかけておきます。受付では、明るい表情で「本日〇時より、看護部の〇〇様と面接のお約束をいただいております、〇〇(フルネーム)と申します」とハキハキと伝えます。

控室(待合室)での姿勢:スマートフォン厳禁

控室で待っている間の姿は、あなたが思う以上に見られています。 最大の注意点は、「スマートフォンを絶対に触らない」ことです。通知をチェックしたり、時間を潰したりする姿は、それだけで「緊張感がない」「マナー違反」と判断されます。背筋を伸ばし、持参した資料に目を通すか、静かに待機してください。

入室時のマナー(ノックは3回)

名前を呼ばれたら、ドアをゆっくり3回ノックします(ビジネスシーンでは3回が基本です)。「どうぞ」と中から返事があったら、「失礼いたします」と一礼して入室します。 ドアを閉める際は、後ろ手で閉めず、ドアの方へ向き直ってから静かに閉めます。

挨拶とお辞儀

面接官の前に進み、「〇〇(フルネーム)と申します。本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします」と挨拶し、最敬礼(45度)で深くお辞儀をします。

着席のタイミング

挨拶の後、「どうぞお掛けください」と勧められてから、「失礼いたします」と軽く一礼して着席します。勝手に座ってはいけません。カバンは椅子の横の床(利き手側)に、倒れないように置きます。


【面接中】看護師としての「適性」が問われるマナー

面接中の受け答えは、あなたの「協調性(チーム医療への適性)」を判断する場です。

姿勢、視線、表情(ボディランゲージ)

背筋を伸ばし、背もたれに寄りかからずに座ります。手は膝の上で軽く組みます。 視線は面接官(話している人)の目や、緊張する場合は鼻から眉間のあたりを見ます。マスク着用が基本の現在、あなたの表情は「目元」で決まります。真顔ではなく、目元が少し柔らかくなるよう意識するだけで、好印象を与えられます。

重要なのは「話し方」よりも「聞き方」

採用担当者は、流暢に話す人よりも、「相手の話を正確に聞ける人」を求めています。 面接官が話している間は、適度に「相槌(あいづち)」を打ち、深く頷きながら聞くことで、「傾聴力(コミュニケーション能力)」をアピールできます。質問には、まず「はい」と明瞭に返事をしてから回答を始めます。

簡潔な回答(結論ファースト)

緊張すると、何を聞かれたか分からなくなり、だらだらと話しがちです。必ず「質問されたことに対して、結論から先に答える」ことを意識してください。具体的なエピソードは、その後に続けます。

「逆質問」は熱意を伝えるチャンス

面接の最後には、ほぼ確実に「何か質問はありますか?」と聞かれます。 最大のNGは「特にありません」と答えることです。これは「あなた(病院)に興味がありません」と宣言するのと同じです。 給与や休日といった条件面「だけ」の質問も、権利ばかり主張する人という印象を与えるため避けます。 「入職までに準備しておくべきことはありますか」「中途採用の方への教育体制について教えてください」など、働く意欲を示す質問を必ず2〜3個は準備しておきましょう。


【面接後・退室編】最後まで見られているという意識

感謝の言葉と退室

面接が終了したら、座ったまま「本日はお忙しい中、誠にありがとうございました」と深く一礼します。 立ち上がって椅子の横で再度「ありがとうございました」と一礼し、ドアの前まで進みます。ドアを開ける前に、もう一度面接官の方へ向き直り、「失礼いたします」と丁寧に最後のお辞儀をしてから退室します。

「お礼状」は必要か?

面接後のお礼状(手紙)は、必須ではありません。特に大規模病院の大量採用プロセスでは、人事担当者の負担になる場合もあります。 ただし、感謝を伝えたい場合、手紙よりもEメールで、当日中(遅くとも翌日午前中)に簡潔にお礼の気持ちを送るのが、現代的でスマートなマナーです。これにより丁寧さと迅速さをアピールできます。


マナーとは「相手への配慮」であり、看護の基本姿勢そのものです

看護師の面接マナーとは、堅苦しいルールの暗記ではありません。その本質は「相手(面接官)を不快にさせない」「相手の時間を尊重する」という「配慮」です。

その姿勢は、そのまま「患者さんの立場に立って考える」「多忙な医師や同僚の負担を減らす」という看護の基本姿勢に直結します。

万全の準備をして自信を持つことが、緊張を和らげ、あなたの本来の魅力を伝える一番の近道です。あなたの面接が成功することを心より願っています。