志望動機とは

志望動機は、なぜその医療機関で働きたいのかを、あなたの経験とこれからの成長計画に結びつけて説明する文章です。看護師の転職では、配属領域や患者層、チーム体制、教育制度、働き方の前提を踏まえて、どのように貢献し、どのように学び続けるかを具体的に語ることが大切です。一般論ではなく、その病院やステーションだからこそという視点が説得力を高めます。

なぜ重要か

志望動機は、書類選考や面接で最初に確かめられる要所です。採用側は、ジョブディスクリプションに書かれた役割と、あなたの臨床経験や強みが重なるかを見ています。合否だけでなく、配属の最適化やオンボーディングの設計にも影響するため、あなた自身にとっても、入職後の働きやすさを左右する重要なパートになります。

つくり方の基本

志望動機は、過去 現在 未来の三段で組み立てると自然にまとまります。過去では経験領域と学びを手短に示し、現在では応募先の特徴に惹かれた理由を具体的に挙げ、未来では最初の九十日で果たす役割や一年後の姿を描きます。数字や運用の言葉を少し添えると、現場のイメージが共有しやすくなります。

情報の集め方と読み解きのコツ

募集要項や採用ページ、病院機能評価の公開情報、入院基本料や平均在院日数、救急搬送件数、オペ件数、分娩件数などは、患者層やケアの重みを読み解く鍵になります。電子カルテのメーカー、PNSやフォーカスチャーティングの運用、夜勤体制やオンコールの頻度、ラダーやプリセプター制度、Off-JTや学会参加の補助なども志望動機に直結します。見学やカジュアル面談で得た具体的な気づきを一文入れると臨場感が出ます。

志望動機に入れたい看護ならではの軸

患者層とケアプロセスへの適合
急性期、回復期、地域包括ケア、療養、精神科、小児、産科、ICUやHCU、オペ室、透析、訪問看護など、あなたの経験や興味と患者像の重なりを言語化します。

チームと記録の文化
多職種連携の流れ、カンファレンス頻度、MSWやPT OT STとの関わり方、電子カルテや投薬のダブルチェック、バーコード投薬の有無など、現場の運用に触れます。

安全と学び
医療安全や感染対策への姿勢、BLSやACLS、委員会活動、チェックリスト改善、OJTとOff-JTの設計、ラダーの到達度など、品質と成長の両面を示します。

働き方の前提
二交替 三交替、夜勤回数の目安、オンコール、時短や日勤常勤、直行直帰やICT活用、リロケーションサポートなど、生活と仕事の両立に関わる条件も、志望先の方針と結びます。

書類向けの構成テンプレート

一段目で、直近の領域と強みを三行で要約します。次に、応募先の特徴に惹かれた理由を二つだけ挙げます。最後に、最初の九十日での貢献と一年後の姿を一文で締めます。文章は短めの段落で区切り、数字や期間、受け持ち人数などを少量織り交ぜると読みやすくなります。

例文でイメージをつかむ

急性期一般病棟志望の例
整形外科主体の急性期一般病棟で五年間、術後管理と早期離床を中心に担当しました。御院は平均在院日数が短くリハビリ職との連携が濃い点、PNSとフォーカスチャーティングで記録の質を高めている点に魅力を感じています。まずは夜勤二名体制の中で安全な術後観察と疼痛コントロールに貢献し、三か月以内に退院支援のリードタイム短縮を小さな改善から提案したいと考えています。

回復期病棟志望の例
回復期での二年間、ADL評価と多職種カンファレンスを通じた退院支援に携わりました。地域包括ケア病棟と連携し在宅への橋渡しを強化している点に共感しています。初期は担当患者の目標設定と家族支援を丁寧に進め、半年後には退院支援のチェックリストを現場に合わせて更新する役割を担いたいです。

訪問看護志望の例
外来と救急での経験を生かし、在宅でのターミナルケアと家族支援に軸足を移したいと考えています。直行直帰やICT記録、オンコール体制の運用が整っている点が魅力です。まずは一日五件の訪問を安全に回し、三か月で緊急時の初期対応手順を自分の言葉で説明できる状態を目標にします。

ICU HCU志望の例
HCUでの循環管理と人工呼吸器管理を二年間経験しました。鎮静鎮痛のプロトコルとデリリアム予防の取り組みが公開されている点に共感しています。入職後は機器管理と記録の標準化に合わせ、夜間帯の申し送り精度向上に貢献したいです。

透析室志望の例
透析クリニックで穿刺と回路管理、合併症対応を担当してきました。フットケア外来と連携し、教育プログラムを運用している点に惹かれています。入職後は安全指標の見直しと患者教育資料の更新に関与し、低血圧発生率の低減に取り組みたいと考えています。

面接での話し方の型

冒頭の六十秒で、どの患者層にどのように価値を出せるかを結論から述べます。次に一例だけ、状況 役割 行動 結果の順で具体化します。最後に、応募先の運用や指標に言及して、最初の九十日での貢献を一文で描きます。冗長な経歴の羅列より、一点集中の事例が伝わります。

志望動機と転職理由の違い

転職理由は現職を離れる背景、志望動機は行き先で実現したい未来です。面接では、現職の事実に触れつつ、学びと改善意欲で結ぶと前向きに伝わります。志望動機は必ず応募先のミッションや患者支援の方針に接続させ、言葉を合わせます。

ありがちな弱点と整え方

抽象的な表現が続くと、誰にでも当てはまる印象になります。病棟種別、患者層、受け持ち人数、夜勤体制、記録方式、連携の具体といった固有名詞を少し入れましょう。もう一つの弱点は数字の欠如です。期間や比率、件数を無理のない範囲で添えるだけでも再現性が増します。最後に、応募先ならではの理由が見つからないときは、見学や説明会で得た一文を加えると輪郭がはっきりします。

学びと安全への姿勢をどう織り込むか

医療安全や感染対策、ヒヤリハットの共有、ダブルチェックやバーコード投薬の運用に触れると、品質への意識が伝わります。ラダーの到達度やプリセプター経験、委員会活動、BLSやACLSの受講歴も、現場での信頼感につながります。学会発表や院外研修、Off-JTの活用は、継続学習の証拠になります。

ブランクや転科希望の書き方

育児や介護、体調、学習のための離職期間がある場合、経緯と再発防止や学び直しの内容を短く添えます。転科では、共通する患者支援の視点と不足する技能をどう補うかを言語化します。例えば、急性期から訪問看護への転科なら、退院支援の経験と在宅の緊急時対応の学習計画をセットで述べます。

逆質問につなげる

志望動機の最後に、配属候補や最初の九十日の到達点、夜勤やオンコール体制、カンファレンスの運用、電子カルテや記録方式、教育体制や1on1の頻度、退院支援の流れなど、具体的な確認事項へ橋渡しすると、相互理解が進みます。面接は合否だけでなく、働くイメージの擦り合わせの場です。

仕上げのチェックポイント

自分の言葉で読み上げたとき、三分以内に収まるか。応募先の固有名詞が入っているか。患者層とケアプロセス、チーム体制、記録方式、安全と学び、働き方の前提が、どこか一か所でも具体に触れられているか。期間や件数、比率などの数字が一つは含まれているか。志望動機と転職理由が混ざっていないか。この五点を整えるだけで、印象は大きく変わります。

志望動機は、あなたの看護の芯と応募先の現場を一本の線で結ぶ文章です。

経験を過去 現在 未来の流れに置き、患者像と運用の言葉で具体化し、安全と学びの姿勢を添える。面接では六十秒の型で要点を伝え、逆質問で働くイメージを確かめる。小さな具体と前向きな視点が、納得感のあるマッチングを引き寄せます。