内定とは
内定(ないてい)は、選考の最終段階で医療機関からあなたに「入職してほしい」という意思が正式に示される段階です。書類選考やWEB面接、病院見学、現場師長面接を経て、看護部長面接、理事長面接や院長面接に至り、条件のすり合わせが整うと内定通知が届きます。ここからは労働条件通知書や就業規則の確認、入職日の調整、前職の退職手続き、健康診断、オンボーディング準備など、入職までの具体の段取りに移ります。
内定までの流れを把握する
多くの医療機関では、一次面接や適性検査、小論文、病院見学などを組み合わせて相互理解を深めます。現場の師長や主任が配属適性を見極め、看護部長面接では看護理念や安全文化との接続、教育や評価体制との相性が確認されます。理事長面接や院長面接では、地域連携や病院方針、働き方改革の考え方に触れながら、長期的に活躍できるかが問われます。面接で交わした具体は、内定後の配属やOJT、Off-JT、ラダー運用、1on1の頻度などの設計に直結します。
内定通知の形式と確認資料
内定は口頭、メール、オファーレター(内定通知書)などで示され、続いて労働条件通知書が交付されます。賃金や手当、所定労働時間、休日、試用期間、就業場所、業務内容、退職に関する事項など、法定の明示項目が文字で確認できることが重要です。就業規則や賃金規程、評価制度の概要、夜勤やオンコールの運用、配属予定の病棟名や看護体制(PNS、チームナーシング)、記録方式(電子カルテ、フォーカスチャーティング、SOAP)も、可能な範囲で文書や資料で確認しましょう。
労働条件の読み解き方(看護職の要所)
給与は基本給と各種手当を分けて把握します。夜勤手当(準夜・深夜で差があるか)、オンコール手当、資格手当(認定看護師や専門看護師)、住宅手当、通勤手当、寒冷地手当などを合算し、賞与の算定基礎と回数を確認します。固定残業の有無や時間数、超過時の割増計算、モデル年収の前提(夜勤回数、交替制の種類)も要チェックです。勤務形態は二交替か三交替、夜勤帯の看護師と看護補助者の人数、仮眠と休憩の取り方、シフト提出のルールを具体にすり合わせます。年間休日、有給の平均取得日数、産休育休の取得と復帰率、託児所や病児保育、住宅制度や寮、リロケーションサポートの有無も生活面の重要条件です。
配属と業務範囲の確定
配属病棟や外来、オペ室、ICU・HCU、透析、訪問看護などの領域が確定しているか、看護必要度の傾向、日勤と夜勤の受け持ち人数、救急や緊急オペの呼び出し頻度、申し送りとカンファレンスの運用、インシデントの振り返り方法など、現場の運用を言語化しておくとミスマッチを避けられます。電子カルテのメーカー、投薬のダブルチェック、バーコード投薬、モバイル端末の活用なども、立ち上がりの速さに関わります。
オファー交渉のコツ
交渉は礼儀と根拠が鍵です。年収だけでなく、夜勤回数の上限、オンコールの頻度、日勤常勤や時短の可否、配属の優先順位、教育・資格支援、通勤や住宅の条件など、日々の働きやすさに直結する項目から整理します。病院見学や面接で得た運用の言葉を使い、「夜勤二名体制での術後観察に強みがあるため、月四回を上限に貢献したい」のように、現場貢献とセットで伝えると前向きに受け止められます。
内定承諾のマナー
承諾の意志が固まったら、期限内に承諾書の提出やメールでの意思表示を行います。入職日、雇用形態(常勤、日勤常勤、非常勤、夜勤専従)、試用期間中の待遇差、社会保険の加入時期、初日の持ち物、オリエンテーションやオンボーディングの予定を確認します。併せて、必要書類(身分証、マイナンバー、住民票、年金手帳や基礎年金番号、雇用保険被保険者番号、資格証の写し、予防接種歴、健康診断書、身元保証書、誓約書、秘密保持に関する同意)の提出スケジュールも整えましょう。
内定保留と内定辞退の伝え方
複数選考が進行中なら、保留のお願いは正直に期限を示して依頼します。相手のスケジュールに配慮し、途中経過も短く共有すると信頼が保たれます。辞退は決めた時点で速やかに、感謝と理由を簡潔に伝え、将来のご縁を大切にする姿勢で締めくくります。どちらの場合も、病院側の調整負担を念頭に、早く正確な連絡が基本です。
内定後から入職までの準備
健康診断や感染症の抗体価確認、必要なワクチンの接種、ユニフォームやナースシューズの準備、名札やロッカー、駐車場や更衣室の利用案内、勤務表の初回配布日など、初日の不安を減らす要素を前倒しで確認します。前職では退職願と退職届の提出、引き継ぎ、離職票や源泉徴収票の手配、有給消化の計画を進めます。SNSや外部への情報発信は就業規則と個人情報保護の観点で慎重に扱いましょう。
社会保険・税・手続きの基礎
入職に伴い、健康保険と厚生年金の加入手続きが新勤務先で行われます。雇用保険や労災保険の適用、住民税の特別徴収の切り替え、扶養控除等申告書の提出、通勤経路の申請、通勤手当や社宅の取り扱いなど、事務手続きは早めに書類を整えるとスムーズです。副業や兼業に関する規程がある場合は、申請や可否の条件を就業規則で必ず確認します。
もし条件に疑問が出たら
労働条件通知書と求人票の記載に差異があれば、感情的にならず文書で質問し、修正や補足説明を依頼します。固定残業の扱い、夜勤回数の上限、オンコールの出動条件、評価や昇給のタイミング、退職金制度、試用期間中の賃金や手当など、納得できるまで確認することは求職者の権利です。説明が難しい場合は、看護系の転職エージェントや公的窓口に相談して視点を増やすのも有効です。
複数内定の比較軸
比較は、配属領域と患者層、看護必要度の水準、日勤・夜勤の受け持ち人数、看護補助者の配置、申し送りとカンファレンスの運用、記録方式と電子カルテ、教育体制と資格支援、1on1や評価の透明性、年間休日と有給実績、託児や住宅、通勤動線、モデル年収の前提という順で見るとブレません。数字と運用の両面で整理すると、あなたに合う現場が自然に浮かび上がります。
内定取消しを避けるために
経歴や資格、勤務実績は正確に伝えることが大前提です。健康上の配慮が必要なら、入職前に相談し、勤務上の合理的な調整が可能かを擦り合わせます。連絡の遅延や無断の情報開示は誤解を招きます。やむを得ない事情が生じた場合は、証拠とともに早めに共有し、代替案を一緒に検討しましょう。
入職後の30・60・90日計画
初月は環境構築と業務の全体像を掴み、PNSやチェックリストを活用しながら安全に小さな成果を重ねます。二か月目は一人称で任せられる範囲を広げ、多職種連携や退院支援、インシデントの振り返りに主体的に関わります。三か月目は小さな改善提案を実行し、記録や申し送りの標準化に貢献します。週次の1on1と月次レビューで学びを蓄積すると、立ち上がりが安定します。
内定はゴールではなく、納得して長く働ける現場へ向かうスタートライン
看護部長面接や理事長面接で交わした価値観と、病院見学や面接で得た運用の具体を思い出しながら、労働条件通知書で数字とルールを固め、入職までの準備を着実に進めましょう。配属、シフト、教育、安全、暮らしという五つの軸がそろうほど、あなたの看護はより早く、より安心して発揮されます。丁寧な確認と前向きな対話が、良いスタートをつくります。