オンコールとは

オンコールとは、勤務時間外に自宅や待機場所で連絡を受け、呼び出しがあれば出動して対応する働き方のことです。看護現場では、病棟の緊急入院や術後の急変、外来の救急対応、オペ室の緊急手術、透析のトラブル、訪問看護の夜間コールなど、患者安全とケアの連続性を守るために運用されます。二交替や三交替のシフト、夜勤専従や日勤常勤と組み合わせながら、申し送りやカンファレンス、電子カルテでの記録、ダブルチェックやバーコード投薬といった標準手順を、夜間や休日にも切れ目なくつなぐ役割です。

どこで発生するか(配属と場面のイメージ)

急性期一般病棟では、夜間の入院受けや術後観察の強化が中心になります。回復期や地域包括ケアでは、安眠支援や転倒転落予防、家族からの体調相談が多く、療養や精神科は環境調整と安全確認が大切です。ICU・HCUは人工呼吸器や循環管理の変化に対する迅速な初動、オペ室は緊急症例の器械出し・外回りの準備が主な役割。訪問看護は発熱・疼痛・呼吸苦・点滴トラブル・終末期の症状変化など、緊急訪問と電話トリアージの精度が求められます。

出動基準と連絡の流れ

オンコールの価値は、呼出基準とエスカレーションの設計で決まります。誰が最初に電話を受け、どの症状なら看護師が指示のもとで対応し、どの条件で医師や当直へつなぐのかを明確にします。連絡ルート、記録の残し方、電子カルテの入力タイミング、家族への説明、救急搬送の判断基準までが一連のフローです。病棟では受け持ちの引き継ぎ・申し送り、訪問看護では直行直帰のルールや鍵・薬剤の管理を、事前に言葉と手順で合わせておくと安全です。

手当と待遇の考え方(待機と呼出のちがい)

待機している時間に付く待機手当やオンコール手当、実際に出動した時間に付く呼出手当や時間外割増、深夜割増、移動時間の扱い、代休や振替の有無は、労働条件通知書と就業規則、賃金規程に明記されます。家から出られないほど拘束される待機か、生活の範囲で連絡を待つ待機かで取り扱いが変わることがあるため、回数・金額・計算方法・支給条件を面接やオファー面談で確認しておくと安心です。

シフト設計と回数の目安(無理のないローテーション)

オンコールは、二交替や三交替の外側に重ねる設計が多いため、回数の上限と連続可否、翌日の勤務免除や始業時刻の繰り下げ、明けの会議参加の取り扱いが働きやすさを左右します。子育てや介護、通勤動線の事情による免除やローテの配慮、夜勤専従や日勤常勤との兼ね合いを、看護部と人事で合意できると、生活と安全の両立がしやすくなります。

訪問看護でのオンコール(緊急訪問のリアル)

在宅療養では、電話トリアージの段階で症状の重さを見極め、緊急訪問の可否を判断します。発熱や疼痛コントロール、呼吸苦、褥瘡やストマのトラブル、点滴や医療機器の不具合など、観察と応急対応、家族支援を短時間で組み立てます。移動手段の確保、夜間の鍵やマンション入館の手順、連絡先の二重化、記録のタイミング、医師指示の確認、救急搬送の判断基準までが重要です。直行直帰のルール、自家用車の使用可否と交通費、緊急バッグや物品の管理も事前に決めておきます。

病棟・オペ室・透析のオンコール(院内導線の確認)

病棟では、救急導線や夜間検査の流れ、ナースコールの波、看護補助者との分担、早朝の採血や術前準備の重なり具合を押さえます。オペ室は症例の優先順位と器械・物品のセット、タイムアウトの徹底、術前評価の共有が鍵です。透析は穿刺トラブルや回路不具合、血圧変動への初動、記録の確定と申し送りの精度が安全を左右します。

体調管理と生活リズム(長く続けるために)

オンコールの日は、短い仮眠と軽食、出動に備えた水分と服薬、帰宅後の睡眠導入、翌日のリズム調整が欠かせません。光の浴び方やカフェインのタイミング、ストレッチや呼吸法など、負担を溜めないルーティンを持つと安定します。家族や同居人には連絡ルールを共有し、夜間の外出や車移動がある場合は安全第一の運用を徹底します。

当直・宿直・夜勤とのちがい

当直や宿直は施設内での待機が前提で、滞在そのものが勤務に近い扱いになります。夜勤は勤務枠として病棟運営に組み込まれ、受け持ち患者を持って働くのが基本です。オンコールは勤務外の待機をベースに、呼び出し時のみ出動して実働が発生する点が特徴です。この違いは手当や時間外計算、翌日の勤務扱いに関係するため、言葉の定義を就業規則で確認しておくと齟齬を防げます。

面接・見学・オファー面談で確認したいこと

オンコールの回数と曜日の偏り、待機場所と連絡手段、出動基準とエスカレーション、呼出の平均時間と最長時間、移動時間の扱い、翌日の勤務調整、待機手当と呼出手当の金額、深夜帯の人員配置、受け持ち人数の上限、記録のタイミング、インシデントの共有方法、1on1やラダー評価への反映、教育委員会や研修の参加可否、託児や駐車場の有無まで、運用と言葉で一致させておくと安心です。口頭合意は短いメールで要点を残し、労働条件通知書や賃金規程と差異がないかを照合します。

安全と納得感を守る

回数が想定以上に増える、明けの会議や研修で休息が削られる、呼出の移動時間が手当に反映されない、記録に必要な時間が確保できない、といった悩みは起きがちです。対策は、回数の上限と翌日の勤務調整、移動時間の取り扱い、記録のタイムブロック、夜間の人員配置の目安を文書で決めること。訪問看護では二重連絡体制と緊急バッグの標準化、病棟では申し送りの要点化と夜間のダブルチェック手順を明確にすると、負担が軽くなります。

オンコールは、患者安全とケアの連続性を守るための大切な仕組みです。

オンコールは、患者安全とケアの連続性を守るための大切な仕組みです。配属、出動基準、手当と時間外、シフト設計、記録と連絡、体調管理という六つの軸で運用を言語化し、見学・面接・オファー面談で数字まで一致させれば、安心して力を発揮できます。あなたの生活リズムとキャリアの狙いに合うオンコール設計を選び、最初の九十日で自分の型を整えていきましょう。