急性期病院とは
急性期病院(きゅうせいきびょういん)とは、救急搬送や手術、集中治療が必要な患者を受け入れ、短い在院日数で集中的に治療・看護を行う医療機関のことです。救急外来(ER)や手術室、ICU・HCU、SCU(脳卒中ケアユニット)やCCU(心臓集中治療室)などを備え、周術期管理、急変対応、早期離床と早期リハビリ、退院支援までを多職種連携で進めます。看護では医療・看護必要度、トリアージ、疼痛コントロール、感染対策、インシデント共有、電子カルテでのタイムリーな記録が日常業務の基盤になります。
配属と業務のイメージ(どこでどんな看護をするか)
一般急性期病棟では、術前・術後の観察、点滴管理、与薬のダブルチェック、検査搬送、退院調整が連日発生します。ICU・HCUでは人工呼吸器やNPPV、シリンジポンプ・輸液ポンプ、循環作動薬の管理など、高頻度の観察と迅速な判断が求められます。救急外来は救急車受け入れや初療、トリアージ、画像検査や採血の導線調整が中心。オペ室はタイムアウトの徹底、器械出し・外回り、術中記録と連携が要になります。化学療法室やカテーテル室、透析室などの専門ユニットでは、レジメン管理や出血・疼痛・合併症への即応がポイントです。
仕事のリズムとシフト(2交代・3交代・夜勤専従)
急性期は24時間体制が基本で、二交代制や三交代制、夜勤専従の枠が組み合わされます。日中は検査・手術・退院支援・カンファレンスが集中し、夜間は観察密度の高いラウンド、急変初動、早朝の採血や術前準備に比重が移ります。申し送りは簡潔かつ具体に、フォーカスチャーティングやSOAPで要点を残し、バーコード投薬やダブルチェックで安全を担保します。
安全とスピードを両立させる
標準予防策と感染制御(ICT)、抗菌薬適正使用(ASP)、クリニカルパス、早期離床、RRT(ラピッドレスポンスチーム)・コードブルー、痛みの評価と鎮痛(例 RASSなどの評価活用)、輸血や血液浄化、中心静脈カテーテルやPICCの管理、デバイス関連感染の予防、家族支援と意思決定支援。こうしたキーワードが日々の看護判断を支え、患者安全文化を形作ります。
数字で見る急性期
平均在院日数は「どれだけ短期集中で治療を完了できているか」の目安、病床稼働率はベッドコントロールの上手さ、入院基本料や看護配置(例 7対1)は人員体制の厚みを示します。DPC/PDPSは入院医療を病名や手術などの組み合わせで包括評価する仕組みで、クリニカルパスや標準化と相性が良いと覚えると理解しやすくなります。
学びとキャリア(OJT・Off-JT・認定)
急性期は学びの機会が豊富です。OJTでの実地指導に加え、院内研修やeラーニング(Off-JT)、1on1面談で成長を見える化できます。救急看護、集中ケア、手術看護、感染管理、がん化学療法看護、透析看護など認定・専門領域も多く、症例の幅が広いほど将来の選択肢が増えます。
向いている人のヒント(適性)
観察から判断、判断から行動までの切り替えが速い人、チームで声を掛け合いながら動ける人、記録と報告の精度にこだわれる人は急性期で力を発揮しやすいです。忙しさの中でも患者と家族の安心をつくるコミュニケーションを大切にできる姿勢が、最終的にアウトカムを左右します。
病院見学・面接で確認したい運用(ミスマッチを防ぐ)
看護必要度の分布、受け持ち人数の目安、二交代か三交代か、夜勤帯の看護師と看護補助者の人数、明け残業や仮眠の運用、バーコード投薬とダブルチェック、RRT・コードブルーの出動基準、救急導線と検査部門の連携、記録時間の確保方法、電子カルテのメーカーとテンプレ、インシデントの振り返りの場、1on1やラダー評価の頻度。これらを現場の言葉と数字で合わせると、入職後のギャップが小さくなります。
年収・待遇の考え方(モデル年収の前提を確認)
急性期は夜勤手当・深夜割増・オンコールの有無が収入に与える影響が大きめです。モデル年収は夜勤回数や交替制の前提で変わるため、労働条件通知書で固定残業の有無と時間数、超過割増、賞与の算定基礎、試用期間中の手当の扱いを照合します。託児所や病児保育、住宅手当、通勤動線、駐車場の有無も、長く働くうえでの重要条件です。
一日の流れの例(臨床の空気感をつかむ)
朝の申し送りで夜間の変化を把握し、観察と与薬、検査搬送や処置、カンファレンス、退院支援の調整、午後は手術後の受け入れや疼痛コントロール、夕方にかけて記録を確定し次の帯へバトンを渡す。救急受けや緊急オペが入れば優先順位を組み替え、チームで分担して乗り切ります。こうした日々の繰り返しが、判断の再現性を育てます。
安全と余裕を守る
申し送りが長文化して記録時間が圧迫される、受け持ちが増えてダブルチェックの精度が下がる、救急導線の混雑で処置が遅れる。対策は、記録のタイムブロック、要点化した申し送り、受け持ち人数と看護補助者配置の見直し、検査部門との連絡手順の明確化。口頭合意は短いメールで要点を残すと、運用の微調整が早く進みます.
急性期病院とは、スピードと安全を両立させながら、チームで患者の命と生活を支える現場です。
急性期病院とは、スピードと安全を両立させながら、チームで患者の命と生活を支える現場です。配属、シフト、観察と記録、急変初動、退院支援、教育と評価という六つの軸で条件を言語化し、見学・面接・オファー面談で数字まで一致させれば、安心してスタートできます。忙しさの中で磨いた判断力と連携力は、あなたのキャリアを確かな強みに変えてくれます。