看護師の転職活動において、入職後のミスマッチを防ぐために「職場見学」は非常に重要なプロセスです。しかし、見学を希望する病院や施設への「最初のアプローチ(申し込み)」がメールの場合、その書き方一つであなたの第一印象が左右されます。

「突然メールを送るのは失礼にあたらないか」「何を書けば良いか分からない」と悩む方も多いでしょう。

この記事では、採用担当者に「丁寧で意欲のある人だ」という印象を与え、スムーズに見学日程を取り付けるための、信頼性の高い「申し込みメール」の基本構成と、そのまま使えるケース別の例文を詳しく解説します。


職場見学メールを送る前の「心構え」とマナー

メールはビジネス文書であり、記録に残るものです。丁寧な言葉遣いと、相手への配慮が求められます。

目的:丁寧さを示し、相手の手間を最小限にすること

採用担当者は、日々の業務(多くの場合、看護部長や人事担当者)で非常に多忙です。あなたのメールの目的は、「あなたが誰で、何(見学)を望んでおり、いつが都合が良いか」を簡潔に伝え、相手が返信する手間(=日程調整のコスト)を最小限にすることです。

連絡先(メールアドレス)は正しいですか?

まずは求人票や公式ウェブサイトを確認し、「採用担当」「看護部」「人事課」など、正しい連絡先に送ることがマナーです。代表アドレスしか分からない場合は、「採用ご担当者様」と記載します。

フリーメール(Gmail等)で問題ありません

個人のメールアドレスは、GmailやYahoo!メールなどのフリーメールで問題ありません。ただし、アドレス自体(@より前の部分)が、ニックネームやふさわしくない単語(例:love-nurse, sleepy…など)になっていないか、ビジネスシーンで通用するものかを確認しましょう。


信頼される申し込みメールの「基本構成」6要素

ビジネスメールには「型」があります。この型を守ることで、丁寧で読みやすいメールが作成できます。

1. 件名:目的と氏名を簡潔に

件名を見ただけで、「誰から」「何の要件か」が瞬時に伝わるようにします。 (例:職場見学のお願い(氏名:看護 太郎))

2. 宛名:病院名・部署・担当者名を正式名称で

(医療法人)〇〇会 〇〇病院 看護部 採用ご担当 〇〇様 (担当者名が不明な場合は「採用ご担当者様」とします)

3. 挨拶と名乗り

初めて連絡する場合は、「はじめまして。」で始め、自分の氏名(フルネーム)と、簡単な状況(現職看護師か、学生か)を名乗ります。

4. 要件(見学希望の理由と経緯)

なぜ連絡したのかを明確にします。「貴院の求人を拝見し」「貴院の理念に感銘を受け」など、どこで情報を得て、なぜ見学したいのかを簡潔に伝えます。

5. 見学の希望日時(複数提示する)

ここが最も重要です。相手に「いつがご都合よろしいですか?」と丸投げするのは、相手に調整の手間をすべて押し付けるNGマナーです。 必ず、こちらから「複数の候補日時」を提示します。

6. 締めと署名

「ご多忙中とは存じますが」など、相手を気遣う言葉で締めくくり、自分の連絡先(氏名、住所、電話番号、メールアドレス)を明記した「署名」を必ず入れます。


【ケース別】そのまま使える申し込みメール例文

これらの構成要素を使った、3つのケース別の例文を紹介します。コピーして、ご自身の状況に合わせて修正してご使用ください。


例文1:中途採用(転職者)が応募前に見学したい場合

件名: 職場見学のお願い(氏名:看護 太郎)

本文: 医療法人〇〇会 〇〇病院 看護部 採用ご担当者様

はじめまして。 私、看護 太郎(かんご たろう)と申します。 現在、〇〇病院(※現職または前職)にて看護師として勤務しております。

この度、貴院の求人情報(〇〇求人サイト等)を拝見し、特に貴院が力を入れておられる〇〇(例:急性期リハビリテーション、緩和ケアなど)の分野に深く興味を持ち、連絡させていただきました。

応募に先立ちまして、ぜひ一度、貴院の施設や看護部の雰囲気を見学させていただきたく、お願い申し上げます。

誠に勝手ながら、以下の日程でご調整いただくことは可能でしょうか。

・〇月〇日(月) 13:00〜16:00 ・〇月〇日(水) 終日 ・〇月〇日(金) 10:00〜15:00 (※上記が難しい場合でも、〇月第〇週の平日午後でしたら調整可能です)

ご多忙中とは存じますが、ご検討いただけますと幸いです。 何卒よろしくお願い申し上げます。


看護 太郎(かんご たろう) 〒123-4567 東京都〇〇区〇〇 1-2-3 電話:090-XXXX-XXXX Email:taro.kango@example.com


例文2:新卒学生が病院見学を申し込みたい場合

件名: 病院見学のお願い(〇〇看護大学・看護 花子)

本文: 医療法人〇〇会 〇〇病院 看護部 採用ご担当者様

はじめまして。 私、〇〇看護大学 看護学部看護学科 4年に在籍しております、看護 花子(かんご はなこ)と申します。

貴院のインターンシップに参加した(または、〇〇教授よりお話を伺い)、患者さん中心の温かい看護体制に深く感銘を受け、来年度の就職先として強く志望しております。

つきましては、改めて貴院の〇〇病棟(または、院内全体)の雰囲気や、先輩看護師の皆様が実際に働かれている様子を拝見したく、見学の機会をいただくことは可能でしょうか。

以下の日程で見学させていただくことは可能でしょうか。

・〇月〇日(火) 10:00〜16:00 ・〇月〇日(木) 13:00〜17:00 ・〇月〇日(金) 終日

上記日程以外でも、授業のない日であれば調整可能です。 お忙しいところ大変恐縮ですが、ご検討いただけますと幸いです。 よろしくお願い申し上げます。


看護 花子(かんご はなこ) 〇〇看護大学 看護学部看護学科 4年 〒123-4567 東京都〇〇区〇〇 1-2-3 電話:090-XXXX-XXXX Email:hanako.kango@example.com


例文3:応募と同時に見学も希望する場合

(※これは転職エージェント経由ではなく、直接応募の場合の文面です)

件名: 求人応募および職場見学のお願い(氏名:看護 太郎)

本文: 医療法人〇〇会 〇〇病院 看護部 採用ご担当者様

はじめまして。看護 太郎と申します。 貴院のWebサイトにて〇〇病棟の看護師募集(中途採用)を拝見し、応募させていただきたく連絡いたしました。

(※ここで簡単な自己紹介と志望動機を1〜2行入れる)

つきましては、履歴書・職務経歴書を本メールに添付いたしましたので、ご査収ください。

また、もし可能でございましたら、面接選考の前に、一度、実際に働かれている現場の雰囲気を見学させていただくことはできますでしょうか。

以下の日程であれば、見学・面接ともに終日調整可能でございます。

・〇月〇日(月) ・〇月〇日(火) ・〇月〇日(木)

ご多忙の折、誠に恐縮ではございますが、 ご検討のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


(署名)


【重要】メール作成・送信時の最終チェックポイント

「件名」だけで内容が分かるか

担当者は毎日多くのメールを受け取ります。「よろしくお願いします」だけの件名はNGです。必ず「要件」と「氏名」を入れます。

相手の手間を奪う「いつご都合よろしいでしょうか?」を避ける

前述の通り、「いつが空いていますか?」という質問は、相手にカレンダーを全て確認させる手間を押し付ける行為です。必ずこちらから複数の候補日を提示してください。これがビジネスメールの信頼の基本です。

希望日時は「ピンポイント」すぎないか

「〇月〇日の14時ちょうど」といった指定は、相手が合わせにくいため避けます。「13時〜16時の間」や「〇日(終日)」のように、幅を持たせると親切です。

誤字脱字・宛名の間違いは致命的

病院名、法人名、担当者名を間違うことは、社会人として最も失礼な行為です。送信前に必ず指差し確認をしてください。

返信は24時間以内に(営業時間内に)

見学日程の打診が病院から返ってきたら、感謝の言葉とともに、できるだけ早く(遅くとも24時間以内に)返信します。ただし、返信が深夜や早朝にならないよう、先方の営業時間内(例:平日の9時~17時)に送信する配慮も重要です。