看護師の転職・就職活動における最終関門、「面接」。書類選考を通過したということは、あなたの経歴や資格はすでに基準を満たしているということです。面接官が知りたいのは、「書類では分からない、あなたの本当の人柄」であり、「私たちの病院(施設)で長く、協調性を持って働いてくれる人物か」という点です。
面接でよく聞かれる質問には、すべて「質問の意図(採用側が知りたいこと)」が隠されています。
この記事では、看護師の面接で必ずと言っていいほど聞かれる「よくある質問」をピックアップし、その質問の意図(信頼できる解釈)と、好印象を与えるための回答例を、新卒・転職者向けに徹底的に解説します。
面接の質問には「3つの種類」がある
看護師の面接での質問は、大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類されます。面接官が今、何を知りたがっているのかを意識することで、的確な回答ができます。
- あなたの「人柄・熱意」を知る質問 (例:自己PR、志望動機)
- あなたの「経験・スキル」を確認する質問 (例:これまでの業務内容、得意な処置)
- あなたの「リスク耐性・協調性」を見る質問 (例:ストレス対処、インシデント経験、対人関係)
質問1:退職理由(転職理由)【重要】
これは中途採用(転職者)の面接で、100パーセント聞かれる最重要の質問です。
面接官の意図(なぜ聞くか?)
採用担当者が知りたいのは、退職の事実ではなく、「同じ理由ですぐに辞めてしまわないか」という点です。また、不満の述べ方を通して、あなたの「他責性(人のせいにする傾向)」やプロ意識を見ています。
回答のポイントとNG例
最大のNG回答は、前職の不満(人間関係、給与、残業)だけを述べることです。たとえそれが事実であっても、不満をそのまま伝えると「ウチでも同じ不満を持って辞めるだろう」と判断されます。
必ず、「前職の不満(ネガティブ)」を「次の職場で実現したいこと(ポジティブ)」に変換して答えるのが鉄則です。
回答例(ポジティブ変換)
(事実:残業が多すぎて疲弊した) 回答例: 前職の急性期病棟では多くの臨床経験を積むことができ、大変感謝しております。しかし、日々の業務に追われる中で、患者様一人ひとりと向き合う時間が十分に取れないことに、次第にジレンマを感じるようになりました。今後は、貴院(貴施設)のように、患者様と長期的に関わり、一人ひとりの生活背景まで考慮した看護を実践したいと考え、転職を決意いたしました。
質問2:志望動機【頻出】
これは「退職理由」と必ずセットで聞かれます。「なぜ前の職場を辞めたのか」と「なぜウチを選んだのか」の2つに、一貫したストーリー(論理性)があるかを評価されています。
面接官の意図
「なぜ、数ある他の病院ではなく、ウチなのか」という熱意と本気度を見ています。
回答のポイント
「給料が高いから」「家が近いから」といった条件面はNGです。 必ず、その病院(施設)が持つ「固有の強み」(例:〇〇という分野での実績、特定の看護方式、地域での役割、理念への共感)を挙げ、そこに自分の経験をどう活かせるかを結びつけてください。
(※詳細は「看護師の志望動機の書き方」の記事で解説しています)
質問3:自己PR(あなたの強み)【頻出】
あなたの「セールスポイント」を聞く質問です。
面接官の意図
あなたが自分の強みを客観的に分析できているか、そしてその強みが「証拠(エビデンス)」に基づいているかを知りたいと思っています。
回答のポイント
「私の強みは〇〇です」という結論だけでなく、必ず「(前職などで)その強みを発揮した具体的なエピソード」をセットで答えてください。 (例:「強みは協調性です」→「前職で医師と他部署の調整を行い、カンファレンスを成功させたエピソード」など)
質問4:経験したインシデント(ヒヤリハット)【看護師特有】
これは看護師の面接特有の、非常に重要な「圧迫質問」の一つです。
面接官の意図
この質問の意図は、あなたのミスを責めることではありません。「ミスをしない完璧な看護師」など存在しないことを採用担当者は知っています。
面接官が知りたいのは、以下の3点です。
- ミスに対して「正直」であるか(隠蔽体質がないか)
- ミスをすぐに「報告」できるか(医療安全の基本)
- ミスから「学習」し、「再発防止」に努められるか
回答のポイントとNG例
最大のNG回答は、「インシデントを起こしたことは一度もありません」と答えることです。これは「嘘つき」か「インシデントの認識能力がない(危険な)看護師」であると自己紹介するようなものです。
必ず、「(1)起きた事実 → (2)すぐに行った対応(報告) → (3)そこからの学びと再発防止策」の構成で答えます。
回答例(失敗から学んだ構成)
回答例: はい。前職で内服薬の配薬間違い(インシデント)を起こした経験がございます。幸い患者様に実害はありませんでしたが、すぐに当事者として師長に報告し、インシデントレポートを作成しました。原因は、自分の思い込みと確認不足でした。それ以降、私は「〇〇さんに違いない」という思い込みを捨て、必ずフルネームでの確認と、指差し呼称を徹底するよう行動を改善し、現在まで同種のミスは起こしておりません。
質問5:ストレス対処法・困難だった経験【看護師特有】
看護師はストレスの多い職業です。あなたの「ストレス耐性」を確認する質問です。
面接官の意図
高圧的な医師、困難な患者さん、多忙な業務など、ストレスがかかった時に、逃げ出さずに対処できるセルフコントロール能力があるかを見ています。
回答のポイント
趣味(例:ヨガ、音楽)などを挙げるのは良いですが、それだけでは不十分です。 「(1)業務上のストレス対処(例:同僚や師長に相談する、問題を整理する)」と「(2)プライベートでのストレス解消(趣味など)」の2つの側面から答えると、プロフェッショナルな印象を与えられます。
回答例
回答例: 業務で困難なケースに直面した際は、一人で抱え込まず、まずは同僚や先輩に相談し、客観的なアドバイスをもらうようにしています。また、プライベートでは、休日にジムで運動して汗を流すことで、意識的にオンとオフを切り替え、次の勤務に臨むようにしております。
質問6:チーム医療・医師(他職種)との意見対立【看護師特有】
看護師の仕事は「協調性」が命です。あなたのコミュニケーションスタイルを確認する質問です。
面接官の意図
「イエスマン」でも「トラブルメーカー」でも困る、というのが本音です。「患者さんの利益」を最優先しつつも、組織(チーム)の一員として「適切なコミュニケーション(アサーション)」が取れる人物かを見ています。
回答のポイント
医師などと対立(コンフリクト)した経験自体は、決してマイナスではありません。重要なのは、その対立を「感情論」ではなく、「患者さんのための提案」としてどのように伝えたか、というプロセスです。
回答例
回答例: 治療方針に関して医師と意見が異なった経験があります。その際は、感情的に反論するのではなく、まず医師の治療方針の根拠を伺いました。その上で、「患者様が現在このように不安を訴えられている」という看護師側から見た客観的な事実(情報)を提示し、「このようなケアも併用してはいかがでしょうか」と提案の形で伝え、最終的に合意を得た経験があります。
よくある質問と回答のヒント【その他】
質問7:あなたの長所と短所
短所(弱点)は、必ず「それを改善するために努力していること」とセットで答えます。「私は時間を守れません」といった、看護師として致命的な短所は避けてください。(例:「心配性で確認に時間がかかりすぎる傾向がある」→「その分、確認を怠らない強みでもあるが、時間短縮のためタスクリスト化を徹底している」など)
質問8:ブランク(離職期間)について
ブランクがある場合、理由は正直に(例:育児、介護、留学など)伝えます。嘘をつく必要はありません。その上で、「ブランク期間中も〇〇の勉強を続けていた」「復職への意欲」をポジティブに伝えてください。
質問9:夜勤や残業は可能ですか?
これは非常に重要な確認です。できないことを「できます」と答えて入職すると、後で必ずトラブルになります。家庭の事情などで難しい場合は、正直に「月〇回までなら可能です」など、具体的なラインを伝えてください。
質問10:最後に何か質問はありますか?(逆質問)【最終関門】
面接の最後に必ず聞かれます。ここで「特にありません」と答えるのは、あなたの熱意を疑われる最大のNG回答です。
面接官の意図
あなたの「本気度(入職意欲)」を見ています。本当にここで働きたいなら、疑問の一つや二つは必ずあるはずだと考えています。
回答のポイント
「NG質問」の項目で解説した通り、「給与だけ」の質問や「調べれば分かる」質問は避けます。 見学時の内容や、面接での会話を踏まえ、「入職までに準備しておくべきこと」や「中途(新卒)採用者に期待する役割」など、前向きな質問を1〜2個は用意しておきましょう。
面接は「準備」がすべてです
看護師の面接で聞かれる質問は、ある程度決まっています。重要なのは、その質問の裏にある「意図」を正確に読み取り、「この人なら安心して患者を任せられる」「この人とならチームで働きたい」と感じてもらえる回答を準備しておくことです。
この記事を参考に、あなた自身の経験を整理し、自信を持って面接に臨んでください。