オンコール手当とは
オンコール手当とは、勤務時間外に自宅などで待機し、施設・在宅からの連絡に応じて急な呼び出しに対応できる体制をとることへの対価です。看護師がスマートフォンやポケットベルを持ち、決められた応答時間内に電話対応や出動(コールバック)を行う前提で支給されます。病棟・救急・手術室・カテーテル室・透析・訪問看護・在宅ホスピスなど、夜間や休日に急変や緊急処置が起こりやすい領域で導入されます。
オンコールの対象業務(現場イメージ)
オンコール手当とは、現場のニーズに合わせた呼び出し待機の仕組みです。病棟では急変や術後管理、輸血やドレーン対応、救急では重症搬送の一次受け、手術室やカテ室では緊急開腹・緊急PCIの体制確保、透析では装置トラブルや血管アクセスの問題、訪問看護ではターミナルケアの症状緩和や点滴トラブル、在宅酸素・人工呼吸器のアラートなどが典型例です。一次待機(プライマリー)と二次待機(バックアップ)を分け、出動基準や連絡フローを定める施設も多くあります。
支給の考え方(待機と呼び出しの二段構え)
多くの職場では、待機しているだけで受け取る待機手当と、実際に呼び出されて働いた時間に対する手当が分かれています。前者は「自宅待機」「夜間待機」などの名目で、後者は「呼出手当」「コールバック手当」「時間外賃金」「深夜割増」「休日割増」などで精算します。移動時間の取り扱い、タクシー代や駐車料金の支給、院内での仮眠スペースの有無など、運用で差が出やすい点は事前確認が安心です。
宿直・当直とのちがい(常駐か待機か)
宿直・当直は病院に常駐して見回りや軽微な業務を担う勤務で、オンコールは原則として院外や自宅での待機です。宿直手当は「院内にいる対価」、オンコール手当は「呼び出しに備える対価」と覚えると整理しやすくなります。就業規則や雇用契約で定義が分かれているかを確認しましょう。
就業規則で確認したいポイント
支給額(1回あたり/1晩あたり/月額のいずれか)、呼び出し時の賃金計算(時間外・深夜・休日の割増率)、移動時間の扱い、タクシー代やマイカー通勤の可否、応答時間(例:5〜15分以内に折り返す)、到着時間(例:30分以内に出勤)、飲酒制限や行動範囲、一人当たりの待機回数、二次待機の有無、代休・振替の取り方、長時間連続勤務を避ける休息ルール(勤務間インターバルの取り決めなど)は、面接や見学で必ず言葉と数字で確かめましょう。
勤務区分と割増の考え方
呼び出されて院内や利用者宅で実作業をした時間は、時間外労働としての割増や深夜・休日の割増が発生する運用が一般的です。電話のみで完了したケースをどう記録・精算するか(電話対応の時間を何分単位でカウントするか)、出動が複数回あった場合の扱い、日勤から連続する場合の上限時間や休息付与も、現場ごとにルールが異なります。
生活への影響とセルフケア
オンコールは睡眠リズムや家族の時間に影響しやすいため、携帯の着信音・バイブ設定、急な出動に備えた持ち物リスト(身分証・鍵・名札・上着・夜間の靴・小銭・交通系IC・ペンライト)、移動手段の確保、仮眠の取り方、カフェインの使い方、帰宅後のクールダウン、次勤務への影響を最小化する休息の確保が重要です。チームでのローテーションや二次待機の導入は負担の平準化に役立ちます。
記録と安全(トラブルを減らす仕組み)
コールログ(受電時刻・要件・判断・対応・終了時刻)をテンプレート化し、ヒヤリハットや再来コールの分析につなげると品質が上がります。鍵の受け渡し、深夜入館の手順、緊急連絡先の一覧、医師コールの基準、在宅での単独訪問時の安全合図(到着・退去のワンコール)など、非医療的な安全も運用の要です。
現場別のオンコール像(例でイメージ)
手術室・カテ室では、緊急手術や緊急PCIに備えて麻酔科・臨床工学技士・放射線技師とチーム待機を組みます。訪問看護では、発熱・呼吸苦・疼痛・カテーテルトラブル・褥瘡の悪化・輸液ポンプのアラートなどに電話助言または出動で対応します。透析では、シャント閉塞や装置アラームに対する初期対応や専門職への橋渡しが中心です。救急では増床や観察床の確保、院内の応援要請がかかることがあります。
面接・見学で聞きたい具体質問
月あたりの待機回数と出動回数の実績、呼び出しの多い時間帯、平均滞在時間、翌日勤務の調整、応答と到着の目標時間、看護師の人数とバックアップ、医師や他職種の待機体制、タクシーや駐車場の運用、コール理由の上位5つ、電話で完結する割合、研修・OJTの有無、コール記録のフォーマット。数値と手順で説明してもらえると、入職後のギャップが減ります。
自己PR・志望動機にどう活かすか
オンコールの経験は、優先順位づけ、短い説明、初動の速さ、夜間の安全配慮、家族への安心提供といった強みの証明になります。志望動機では、具体的な改善事例(例:電話トリアージの見直しで出動率を適正化、コールログの標準化で夜間の滞在時間短縮、薬品・物品のセット化で準備時間短縮)を、状況・役割・行動・結果の流れで語ると説得力が増します。
よくあるつまずきと整え方
連続勤務で休息不足になり判断が鈍る、電話だけでの情報が不足して再来コールが増える、移動手段が確保できず到着が遅れる、鍵や入館で滞る。対策は、勤務間の休息確保の明文化、コール時の聴取項目チェックリスト、出動基準の共有、深夜交通の代替手段の準備、鍵・セキュリティの手順書整備です。小さな標準化が安心と安全を底上げします。
安心をつなぐ仕事
オンコール手当は、患者や利用者の「もしも」に備える体制を支える仕組みです。支給の考え方、勤務区分、割増の扱い、行動制限や休息の取り方を具体的に理解し、面接で数値と運用を確かめれば、働く人にも利用者にも無理のないオンコール体制が見えてきます。あなたの観察力と初動の速さ、やさしい説明は、夜間や休日にこそ大きな力になります。