回復期リハビリテーション病棟とは
回復期リハビリテーション病棟とは、脳卒中や大腿骨頸部骨折、脊椎・関節の手術後、廃用症候群など、急性期治療を終えた患者さんが「生活機能を取り戻すこと」を主目的に入院し、集中的な機能訓練と日常生活動作(ADL)訓練、退院支援を受ける病棟のことです。医師・看護師・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)・薬剤師・管理栄養士・医療ソーシャルワーカー(MSW)・地域連携室が一体となり、早期離床、転倒転落予防、嚥下評価と食形態調整、疼痛コントロール、栄養ケア、家族支援を軸に、在宅復帰や地域施設への円滑な移行をめざします。
対象疾患とリハビリのゴール
回復期リハビリテーション病棟(かいふくきりはびりてーしょんびょうとう)とは、急性期で命の安全を確保した後に、「動ける」「食べられる」「話せる」「家庭で暮らせる」を具体的な目標として積み上げていく場所です。脳卒中後の麻痺や高次脳機能障害、骨折や人工関節置換術後の歩行再獲得、廃用による筋力低下や拘縮、嚥下障害や発声の困りごとなど、多様な課題を多職種で分解し、ADL・IADL(買い物、調理、金銭管理など生活関連動作)まで視野に入れて計画を立てます。退院時の姿と生活環境を先に描き、そこから逆算して週間プログラムを組むのが特徴です。
看護師の役割(機能回復と生活再建の要)
看護はリハビリの「時間外」を埋める存在です。離床時間の確保、ポジショニング、トイレ誘導や移乗介助、口腔ケア、嚥下リハとの連携、服薬管理、疼痛やせん妄の観察、睡眠の質向上、排泄自立支援、家族への介護指導まで、病棟生活そのものを訓練の場に変えます。カンファレンスでは観察所見を生活目標に翻訳し、記録はフォーカスチャーティングやSOAPで「観察・介入・結果・次の課題」を短く具体に残してチームの共通言語を作ります。
一日の流れ(生活に溶け込むリハビリ)
朝はバイタルと観察、清潔・更衣・整容を「できることは自分で」を合言葉に進め、食前の嚥下準備体操や食形態の調整、食事介助で「安全に食べる」を練習します。日中はPTでの立ち上がり・歩行・段差訓練、OTでの更衣・トイレ動作・台所動作、STでの嚥下・発声・コミュニケーション訓練を回し、合間に病棟での自主訓練や休息を挟みます。夕方は家族指導や退院準備の打合せ、夜間は安眠支援と体位変換、疼痛コントロールを丁寧に行い、翌日へつなぐ記録と申し送りで締めます。
多職種連携の実際
入院直後に初回カンファレンスを開き、到達目標(短期・中期・退院時)と優先課題、必要な装具・福祉用具、栄養ゴール、服薬方針を決めます。家屋調査では玄関段差、トイレ・浴室の手すり位置、ベッドの高さ、生活動線を確認し、退院後の転倒・誤嚥・低栄養のリスクを事前に潰します。ケアマネジャーや地域包括支援センターと連携し、訪問看護・通所リハ・福祉用具レンタル・住宅改修を退院前から組み立てるのが成功の鍵です。
リハビリと看護をつなぐキーワード
早期離床、転倒転落予防、褥瘡リスク評価、嚥下スクリーニング、口腔機能管理、疼痛スケール、せん妄予防、拘縮予防、排泄自立支援、エネルギー・たんぱく質充足、サルコペニア対策、在宅復帰率、平均在院日数、退院時指導、家族教育、地域連携パス。これらを日々の記録とカンファレンスで往復させ、目標に対する進捗を見える化します。
シフトと働き方(2交代・3交代・日勤常勤の違い)
回復期は日中の訓練量が多く、日勤帯に業務が集中します。二交代・三交代・日勤常勤・夜勤専従など施設ごとに編成は異なりますが、どの形でも「記録時間の確保」「申し送りの要点化」「受け持ち人数の目安」「看護補助者・クラークの役割分担」を言葉と数字で合わせておくと、ADL訓練の機会を取りこぼさずに済みます。明けに会議や家族面談が重ならない工夫も働きやすさに直結します。
年収・待遇の見方(モデル年収の前提を確認)
基本給に加え、夜勤手当・深夜割増・資格手当・通勤手当・住宅手当・固定残業の有無と時間数・超過割増の計算・賞与の算定基礎を労働条件通知書で確認します。回復期は夜勤回数の差が年収に影響しやすいため、想定回数と交替制の前提を必ず照合しましょう。託児所・病児保育、駐車場や通勤動線、学会参加や研修補助の有無も、長く働くうえで重要です。
面接・病棟見学で確認したい運用
受け持ち人数と看護補助者配置、離床時間の目標設定と測り方、転倒予防の仕組み、嚥下評価と食形態決定の流れ、口腔ケア体制、記録時間の守り方、カンファレンスの頻度と参加者、家族指導の進め方、退院支援・地域連携室の動き、電子カルテのテンプレやショートカット、インシデントの振り返りの場。これらが具体的に説明されるかは、働きやすさと学びの濃さを測る物差しになります。
看護師の学び方
最初の30日は導線と標準手順(移乗、トイレ誘導、嚥下前準備、ポジショニング)を身体に入れ、次の30日で観察→介入→記録のスピードと精度を高めます。最後の30日で「食形態の見直し」「離床促進の工夫」「家族指導シートの改善」など小さな提案を一つ形にし、チームに貢献します。事例は状況・役割・行動・結果で短くまとめると、評価や転職時の自己PRに直結します。
起きやすい問題と対処のコツ
訓練スケジュールが詰まり記録が遅れる、食形態や内服調整の情報共有が途切れる、離床時間が伸び悩む、家族への説明が後手になる——こうした課題は起こりがちです。対策は、申し送りの要点化、記録のタイムブロック、共通チェックシートの運用、家族面談の定期化、家屋調査の早期着手。数字(離床時間、摂取量、転倒件数)と運用を紐づけて改善すると再現性が上がります。
キャリアの広がり(認定・専門・地域連携へ)
回復期で磨いた「生活機能を再建する視点」は、脳卒中リハ、摂食嚥下、認知症、在宅看護、地域包括ケア、緩和ケアなど多くの認定・専門領域につながります。退院支援や多職種連携、家族教育の実績は、将来の訪問看護や地域連携室、在宅復帰支援部門でも強みになります。
生活を取り戻す伴走者として
回復期リハビリテーション病棟とは、患者さんが「自分の生活」に帰るための橋を、多職種と家族と一緒に架ける病棟です。配属、シフト、離床と嚥下、栄養と疼痛、記録とカンファレンス、退院支援と地域連携という軸で言葉と数字を合わせ、面接・見学・オファー面談で運用の解像度を上げれば、入職後の立ち上がりは安定します。日々の小さな前進を積み重ね、在宅復帰という大きなゴールへ、チームで確かな道筋をつくっていきましょう。