求人票(きゅうじんひょう)とは
求人票は、医療機関や訪問看護ステーションなどが「どんな人を、どんな条件で迎えたいか」をまとめた募集情報です。応募前に仕事内容や勤務条件を理解し、面接や見学で確認すべき点を整理するための土台になります。契約書ではないため、最終条件は内定後の労働条件通知書で必ず再確認します。
看護・医療ならではの基本項目
施設情報
病院種別(急性期、回復期、慢性期、療養、精神科、小児、産婦人科)、外来か病棟か、オペ室、ICU、HCU、救急、透析、訪問看護など。診療科、手術件数、救急搬送台数、分娩件数、平均在院日数、入院基本料(7対1、10対1など)。
配属と業務範囲
病棟名、担当患者層、受け持ち人数の目安、処置の頻度、夜間救急の呼び出し有無、看護補助者との業務分担、記録方式(電子カルテ、SOAP、フォーカス、PNSなど)。
勤務形態
日勤のみ、二交替、三交替、オンコールの有無と回数、休憩と仮眠の取り方、シフト提出時期、希望休の扱い、月の夜勤回数の上限目安、変形労働時間制の有無。
雇用区分
常勤、日勤常勤、非常勤、夜勤専従、嘱託、契約社員、業務委託など。
給与・手当の読み解き方
給与表示の型
月給、時給、年俸のどれか。基本給と諸手当の内訳を分けているかが重要です。
主な手当
夜勤手当(準夜・深夜で金額差があるか)、オンコール手当、危険手当、資格手当(認定・専門)、住宅手当、家族手当、通勤手当、寒冷地手当、皆勤手当など。
賞与と昇給
回数と算定基礎(例: 基本給×年2回×何か月)。昇給の目安と評価の基準。
固定残業の有無
固定残業代を含む場合は時間数と超過時の割増ルールを確認。
モデル年収
経験年数、夜勤回数が何回前提かまで記載があると比較しやすくなります。
想定年収 計算式
想定年収 = 基本給×12 + 賞与 + 手当総額(夜勤手当×回数など)
休日・休暇と働き方
休日体系
4週8休、完全週休2日、シフト制、祝日振替の有無。年間休日数。
休暇の実態
有給の平均取得日数、夏季・冬季休暇、産休育休の取得と復帰率、介護休業、育児短時間勤務。
残業・時短
月平均残業時間、残業発生の主因(記録時間、救急、オペ延長など)、時短勤務や日勤常勤の選択肢。
リモート要素
訪問看護の記録やカンファレンスでのICT活用、直行直帰の可否。
教育体制とキャリア支援
育成の仕組み
プリセプター、バディ、ラダー、OJT、Off-JT、定期1on1面談の有無。
研修と費用補助
院内外研修、学会参加、資格取得支援(認定看護師、専門看護師)、eラーニングやLMSの利用。
評価と昇格
コンピテンシー評価、目標管理(OKRやMBO)、昇格要件の透明性。
働く環境・設備
記録とツール
電子カルテのメーカー、オーダリング、モバイル端末、バーコード投薬、ナースコール連携。
設備
更衣室、個人ロッカー、休憩室、仮眠室、シャワー、院内食堂・売店、託児所、病児保育。
通勤
車通勤の可否、駐車場の有無と料金、送迎バス、住宅・寮、借上げ社宅、住宅手当。
応募から入職までの流れ
選考フロー
書類選考、適性検査、筆記・実技、面接回数、面接官(看護部長、現場師長、人事)。
見学と体験
職場見学、半日体験、夜勤帯の見学可否。
入職時期
調整の余地、引越しやリロケーションサポート(転居支援)の有無。
試用期間
期間と待遇差、評価の観点。
求人票と労働条件通知書の違い
求人票
募集用の案内。法的拘束力は限定的で、概要中心。
労働条件通知書
内定後に交付される契約条件の明細。就業場所、業務内容、賃金、労働時間、休日、退職に関する事項などが書面で明示されます。相違があれば必ず調整を依頼します。
看護職ならではの確認ポイント
夜勤体制
看護師と看護補助者の人数、救急や緊急オペの呼び出し頻度、仮眠の確保。
受け持ち患者数
日勤・夜勤それぞれの目安、重症度・看護必要度の水準。
業務分担
清拭・食事介助・搬送・環境整備の分担、助手・クラークの体制。
カンファレンス
頻度、記録時間の確保、残業との関係。
安全と事故対応
インシデントの振り返り方法、ヒヤリハット共有、ラピッドレスポンスの導線。
要注意ポイント
✅配属先が未確定のまま入職時期だけ急かされる
✅残業や夜勤回数が曖昧で、実績データの提示がない
✅教育体制の説明が「先輩について学ぶだけ」にとどまる
✅固定残業の時間数や超過時の支払いルールが不明瞭
✅面接で質問しても回答が文書で残らない
面接・見学で使える質問テンプレ
✅夜勤帯の看護師数と看護補助者数、救急の受け入れ件数はどのくらいですか
✅日勤・夜勤の受け持ち患者数の目安、重症度の分布を教えてください
✅記録時間の確保方法と残業の発生理由は何が多いですか
✅新人・中途向けのラダーやプリセプター制度、1on1の頻度はどのくらいですか
✅有給の平均取得日数、産休育休の取得と復帰の実績はどうですか
✅電子カルテのメーカーと、投薬のダブルチェック手順を教えてください
比較のコツ(簡単なシート例)
軸をそろえる
配属候補、勤務形態、夜勤回数、受け持ち数、平均残業、年間休日、教育体制、賞与算定基礎、モデル年収、通勤条件。
数値と運用を両方書く
例: 夜勤4回だけでなく、仮眠確保60分、救急搬送月80件など。
最後に生活条件をのせる
託児所、住宅手当、駐車場の可否、引越し補助。
使いやすいチェックリスト
✅募集元と配属先(病棟名・領域)は明記されているか
✅勤務形態、夜勤・オンコール回数の目安が数字で示されているか
✅基本給と手当の内訳、固定残業の有無、賞与の算定基礎が明確か
✅年間休日、有給取得状況、産休育休の実績は確認できたか
✅教育体制(ラダー・プリセプター・研修費補助)の具体像はあるか
✅電子カルテや投薬管理など、安全面のオペレーションが説明されているか
✅労働条件通知書で最終条件を文書確認する段取りがあるか
求人票は、職場選びの羅針盤です。
数値と運用の両面を読み取り、面接や見学で事実に近づけていくほどミスマッチは減ります。配属、夜勤体制、受け持ち数、教育、安全、給与の内訳という六つの重点を軸に、最後は労働条件通知書で条件を確定。看護の専門性と生活のバランスを両立できる現場を、落ち着いて見極めていきましょう。