派遣看護師 とは
派遣看護師(はけんかんごし) とは、派遣会社(雇用主)と雇用契約を結び、病院・クリニック・介護施設・訪問看護ステーションなどの就業先(派遣先)で一定期間働く働き方のことです。給与の支払い、社会保険の手続き、契約更新の相談は派遣会社が担当し、日々の業務指示は派遣先の看護部や師長から受けます。契約期間が明確で、日勤のみ・夜勤専従・短時間勤務・単発(スポット)・長期といった選択肢が豊富なため、生活と学びを両立させたい看護師にとって現実的な選択肢になります。
仕組みのきほん(雇用主と指揮命令の分かれ方)
雇用契約は派遣会社と結び、労働条件通知書や就業条件明示書で時給・勤務時間・勤務地・シフト・手当・契約期間などが文字で示されます。一方、配属先の病棟や外来での業務内容、受け持ち人数、申し送りやカンファレンスの運用、電子カルテの使い方などは派遣先の指揮命令に従います。顔合わせや職場見学は、仕事内容や環境の説明・適合確認のために行われます(紹介予定派遣のように将来の直接雇用を前提とする場合は面接もあり得ます)。
契約タイプのバリエーション
短期派遣は欠員補充や繁忙期対応で数週間〜数か月。長期派遣は半年〜一年単位で更新を重ね、チームに深く関わります。単発派遣(スポット)は健診・ワクチン・イベント救護など一日完結型。紹介予定派遣は最長一定期間の派遣勤務後、双方合意で常勤・非常勤として直接雇用へ切り替える方式です。どの形でも、契約期間と更新条件、終了時期の取り決めを早めに文書でそろえると安心です。
メリット(柔軟性・比較・収入設計)
派遣の強みは、時間帯と期間を自分の事情に合わせて設計できる柔軟性にあります。日勤のみで家事や育児と両立、夜勤専従で効率的に収入確保、短時間でブランクからゆるやかに復帰、と選べます。複数施設を経験して比較しやすく、看護必要度、受け持ち人数、二交替か三交替か、夜勤体制やオンコールの有無、記録方式(フォーカスチャーティング・SOAP)、電子カルテのメーカー、ダブルチェックやバーコード投薬、多職種連携の流れなど、運用の肌感を短期間でつかめるのも利点です。
注意点(契約終了リスクと情報の粒度)
契約は期間限定で、病棟の患者構成やシフトの事情で更新が見送られることがあります。賞与や退職金、住宅手当などは常勤と取り扱いが異なることが多く、教育や資格支援の枠も派遣は限定的になりがちです。派遣先の「守秘義務」「情報セキュリティ」「患者安全」ルールは厳守で、インシデント共有の方法、申し送りの型、記録時間の確保など現場ルールを初日に速やかに合わせる姿勢が鍵になります。
給与・手当・社会保険の読み方
給与は時給制が中心で、夜勤手当、深夜割増、時間外割増、オンコール手当、通勤手当の有無と計算方法を確認します。月収はシフトの入り方で変動するため、モデル月収の前提(夜勤回数や勤務時間)を必ず押さえます。社会保険(健康保険・厚生年金)と雇用保険の加入は週の所定労働時間・日数などの条件で決まり、有給休暇の付与も派遣会社で管理されます。扶養内で働く場合は年収の上限や税・社会保険の基準を早めに整理すると安心です。
シフトと配属の決まり方
就業先は、急性期一般、回復期・地域包括ケア、療養、精神科、小児・産科、ICU・HCU、オペ室、外来・健診、透析、訪問看護などから選ばれ、二交替や三交替、日勤固定、夜勤専従など契約ごとの前提があります。受け持ち人数の上限、看護補助者・クラークとの役割分担、申し送り・カンファレンスの参加範囲、記録時間の扱いは、派遣会社のコーディネーターを通して事前にすり合わせておくとミスマッチが減ります。
初日の流れとオンボーディング
初日はオリエンテーションで導線、安全確認、電子カルテの基本操作、物品と機器の配置、ダブルチェックやバーコード投薬の手順、感染対策のルールを確認します。PNS(ペアで動く看護体制)やチームナーシングの役割がある場合は、ペアやチームの連絡ルールを最初に決めます。夜勤帯に入る前に、受け持ち人数の目安、救急や緊急オペの呼び出し、仮眠や休憩の取り方、明け残業の実績など実務の前提を早めに言語化すると安全です。
教育・評価・キャリアの育て方
派遣でもOJT(現場での学び)やeラーニング、勉強会に参加できる施設が増えています。ラダー(到達度の目安)や1on1(定期面談)は限定運用になりやすい分、自分で学びの記録を残すと次の契約で強みになります。記録には「状況・役割・行動・結果(STAR)」で事例をまとめ、疼痛コントロール、転倒転落予防、褥瘡対策、退院支援、多職種連携、感染対策などのキーワードを添えると、志望動機や自己PRに転用しやすくなります。紹介予定派遣を活用すれば、派遣で見極めた上で常勤・日勤常勤・非常勤へ進む道も開けます。
こんな人に向いている
生活の事情で時間帯をコントロールしたい、領域転換の前にいくつかの現場を比較したい、ブランクから段階的に復帰したい、夜勤専従で短期に資金をつくりたい、といった目的が明確な人に向きます。地方から都市部へ移る前の試行や、訪問看護・透析・オペ室など専門領域の適性確認にも相性が良い働き方です。
派遣会社との連携ポイント
初回ヒアリングで、希望の配属順位、二交替か三交替か、夜勤回数の上限、オンコール可否、通勤手段と時間、電子カルテの経験、得意な処置や機器、入職可能時期、週の希望時間数を具体化します。就業条件明示書は必ず保存し、口頭合意はメールで要点を残します。タイムシートの締切、遅刻・欠勤・延長の連絡ルート、クレームやインシデント発生時の報告手順も、派遣会社と派遣先の双方で合わせておくと安心です。
病院見学・情報確認の観点
就業先を選ぶ前後で、救急導線、夜勤帯の申し送り、記録時間の確保、看護必要度の傾向、受け持ち人数、看護補助者との分担、カンファレンスの頻度、電子カルテのメーカー、ダブルチェックやバーコード投薬の運用、インシデントの振り返りの場、年間休日と希望休の考え方、更衣室や仮眠室、託児や駐車場の有無など、働きやすさと安全に直結する項目を確認します。訪問看護なら一日の訪問件数、移動手段、直行直帰のルール、記録のタイミングが重要です。
トラブル回避のコツ
契約開始・終了・更新の期日、業務範囲の線引き、夜勤やオンコールの有無、時給と手当の計算、社会保険の取り扱いは、文書でそろえるのが基本です。就業先の変更や条件の修正は、派遣会社経由で調整します。個人情報と院内情報の取り扱い、持ち出し禁止物の確認、貸与物の返却(ICカード・名札・ロッカーキーなど)まで、最初にチェックリスト化すると安心です。